次に、文化施設と税金支出のあり方について伺います。
文化事業や文化施設は、そもそも経済的利益を生むものではなく、経済的に考えれば、逆にお金のかかるものです。しかし、お金にはかえられない価値や豊かさを人やまちに生み出すものであり、私は、本市文化の醸成や市民の文化活動への支援、豊かな市民文化発展のための予算は、必要以上にケチケチ削るのではなく、将来を見越し持続的な視点で、継続・発展できる必要最低限の予算をきちんと確保すべきと考えます。目に見えないこころの豊かさはお金ではかるのではなく、長い目で時間をかけて育むべきものだからです。
しかし、その一方で、ただハコモノありきで再開発事業のための市民会館に莫大で放漫な支出を続けてきたことは、税金のムダ使いであると同時に文化施策の軽視でもあり、市民への背信であって許されないものと考えます。そこで、文化施設に対する市長の姿勢と税金支出のあり方について質問をいたします。
(ア)はじめに、その無駄遣いの象徴となってしまった市民会館について伺います。10年前の計画の当初から、計画を見直し市民のための市民会館を作ってほしいと声をあげ続けてきた市民の会の皆さんが、本市と争っている地方自治法、地方財政法に反した不正な税金支出を問う住民訴訟の控訴審は、今なお審理が続いており、5月には7回目の公判が行われます。こうした市民が自治体を相手取った住民訴訟の控訴審は、通常は1回の審理で結審する場合がほとんどだそうですが、すでに6回も公判を重ね、いまだ結審にいたらない例は本当に珍しいとのことです。それほどに東京高裁では、原告が主張している新市民会館計画の問題点や税金支出の違法性に興味を持って審理をされているということだと思います。裁判では、計画のずさんさ、そもそも泉町再開発と抱き合わせる決定がいつどこでなされたのかも不明であり市長の専断ではないか、行政執行権を逸脱しているのではないか、膨らみ続けた事業費の不透明さなどが争われてきたわけですが、控訴審では、さらに、実際に市民会館が開館し施設運用が始まっている中で、計画段階の市の主張とはかけ離れた現実が、次々に明白な事実として示されているという状況です。
例えばなにかといえば、まちなか再生の起爆剤です。市民会館ができれば、まちなかが活性化し経済も発展し、まちに人がもどり、中心市街地は行き交う人であふれる、さらにビックアーティストのコンサートや大型コンベンションが開催され、市内外からも大勢の人がやってきてにぎわう。と、語り続けていた夢のような物語は、いまだ夢のまま、一向に起爆剤が起爆していないのが現実です。私も議会でこれをずっと指摘し続けてきました。そして、ただ大きなハコモノありきではなく、使いやすい本市の文化に資する施設、市民がつかえる市民のための市民会館をつくるべきと主張し、さまざまな提案もし続けてきましたが、開館して2年目も半ばをすぎ、今の状況は本当に予想通りの展開となっております。
例えば、2000席の大ホール。私は本市に2000席は必要ない、必要で適しているのは800~1000席の質のよい中規模ホールだと、ずっと見直しを求めていました。案の定(冊子)この市民会館の記念誌に出ておりました月別の利用人数の実績をみますと、平均で一日あたり730人、一番利用の多かった月でも1080人です。明らかに2000席の必要がない数字です。さらに、市長は、2000席なければ来ないアーティストが呼べるとさんざんいわれていましたが、どうだったでしょうか。開館後のいわゆるご祝儀相場で1年目は著名なアーティストの公演も入っていましたが、その中に2000席以上でなければやらないというアーティストがいらっしゃったでしょうか。(いないと思います)むしろ2000席では売らず、2階や3階のカーテンをおろした形のコンサートもずいぶんあったようにお聞きしております。私が観にいった公演でも、まさか2000で売るだろうと思っていましたが、3階席が閉じられ、さらに2階席も1階席でも空席が多々出ておりました。私は、2000席のホールを作ったからといって、水戸市の集客状況が変わるわけではないという質問も、例をあげながら何度もしてきましたが、わずか1年半で、これまた言った通りの状況になりました。
さらに、設計の段階から、使い勝手の悪さ、音響の質は致命的になり、最初のうちは有名アーティストが来たとしても、リピートしてくれないホールになる。立地と搬入を考えれば、大がかりな道具を持ち込む公演はできず、いずれ演歌の方や講演会、式典などにしか利用されなくなるという指摘も何度もしてきました。案の定、2年目も半ばをすぎて、大物演歌歌手の公演が少しずつ入ってきたようですが、市長が言い続けてきた若者に人気のビックアーティストとも、2000席なければ来ない、2000席を埋められる公演とも違うと思いますが、いかがでしょうか。五木ひろしさんや水森かおりさんが来てくれるのはうれしいことですが、そのために365億円以上もかけたホールが必要だったでしょうか?ということです。質のよいホールなら旧市民会館規模の1000席でも来てくださったと思います。
この10年あまり市長が語り続けてきた新市民会館と、実際に開館してからの現実との乖離、明らかに私たちが指摘してきた通りの結果となっていることへの市長の責任についてどうお考えか、お答え願います。莫大な事業費をつぎ込んでも夢の起爆剤とはならず、文化施設としても市民文化の拠点としても弾けることなく、この先ずっと毎年3億4千万円以上もの経費、さらに共有地権者への家賃まで、えんえんとつぎ込んでいくことになるのです。市民の税金を預かる立場でこれほど放漫な無駄遣いを続ける市長の責任は非常に重いと考えますが、いかがでしょうか。
また、施設と運営について、今回もいくつか改善を求めて質問します。まず大ホール1階客席についてですが、度々、転倒事故が起きているという事態を市長はご存じでしょうか。壁際の階段にせり出している反響板に頭をぶつけて転倒、階段を落下し骨折された方、また、オーケストラピットとの境目のつなぎ部分に足をとられて躓いたり転倒される方が相次いでいます。反響板については、不規則なせり出しが危険であり、また1階客席であれほど低い位置まで反響板をつける音響効果も大いに疑問であり、デザインに囚われた設計ミスともいえる配置と考えますが、とにかくこれ以上の事故を起こさないために、早急な安全対策、改善策が必要です。ご見解と対応策を伺います。
次に、五軒町2丁目の大型車両用の駐車場ですが、待機車両が長時間のアイドリングをしていることがあり、特に夏場は車内待機している運転手さんはクーラーをかけ続けているしかなく、周辺に排気ガス、騒音等の被害が出ているとのことです。これも早急に改善が必要ではないでしょうか。
最後に、会議室の遮音性についてです。実は、私も過日、中会議室を利用しました。3階の302号室です。隣の部屋では、何か講習会のような大人数の会合が行われていましたが、驚いたことに、その隣の声が筒抜けに聞こえてくるのです。さらに廊下の音や、ガラス面の方からは大通りの市内放送がガンガン聞こえてきて会議に集中できない状況でした。会議室を作って配置しながら、これはなんなんだ?と。設計段階でガラスや壁に防音性を考えなかったのか。これまた重大な設計ミスとしかいいようがありませんが、いかがでしょうか。安普請のアパートではないのですから、莫大な建設費をかけながらこうした事態を避けられない市民会館。これではますます利用者は減ってしまうのではないでしょうか。このあとに質問します「みと文化交流プラザ」なら、会議どころか、大勢で歌を歌おうが芝居の稽古で絶叫しようが、隣の部屋の声は聞こえず、周囲の雑音に紛らわされることなく貸室利用ができます。これまで指摘してきたホールの不備だけでなく、会議室ひとつをとっても、市民会館が文化施設、市民活動の拠点としての体をなしていないハコモノとなっていることについて、市長のご見解と改善策があるのならお伺いしたいと思います。
答弁:市長
次に,市民会館についてお答えいたします。
水戸市民会館につきましては,著名なアーティストのコンサートをはじめ,市民の文化活動の発表の場としての活用や,大規模コンベンションの開催により,当初の目標を大きく上回る大変多くの方々に御利用していただいており,令和5年7月の開館から先月末までに約190万人の来館者を迎えております。
これまでも,こどもから大人まで楽しめる多種多彩な公演を開催してまいりました。ホールの施設・設備等については,主催者側からも好評を博しており,大変ありがたいことに,若い世代にも人気のあるアーティストにも,何度も公演をしていただいているところであります。
私は,これまで水戸での開催がなかったアーティスト等の公演が実現し,市民をはじめ多くの方々が喜んでいる姿を目の当たりにして,2,000席のホールを整備するという判断は正しかったものと自負しているところでございます。
また,市民会館はコンベンションの拠点として,G7茨城水戸内務・安全担当大臣会合をはじめ,全国商工会議所観光振興大会,各種団体の学会など,新しい市民会館でなければ実施できなかった催事が開催されてきました。これらの誘致,開催によって,宿泊,観光等への経済的な効果も生み出されたものと考えております。
さらに,市民会館には,平日においても多くの学生が勉強や歓談にラウンジやロビー等を利用し,若者が日常的に集まる交流の場となっており,当初の目的の一つであるサードプレイスとしての活用も定着しております。
昨年度のグロービスホールなど主な施設の稼働状況につきましては,当初計画の目標値を上回り,他の文化施設と比べても高い水準となっていることから,まちなかの活性化や交流人口の増加につながっているところであります。
水戸商工会議所が毎年実施している歩行者通行量調査によりますと,市民会館前における日曜日の歩行者通行量は,新型コロナウイルス感染拡大前の令和元年の1,629人から,令和5年の
6,527人と約4倍に増えております。同様に,平日においても約1.4倍となっております。
この新しい人の流れは,市民会館が中心市街地活性化の起爆剤としての役割を果たし,整備したことによる効果が非常に大きく現れたものと考えております。このことから,引き続き,若者をはじめ,多くの人が集い,日常的に訪れたくなる居心地のよい場所となるような施設運営の充実を図るとともに,来館者に周辺を回遊していただくために,中心市街地の活性化に向け,関係機関と連携しながら,MitoriO(ミトリオ)を中心としたさらなるにぎわいづくりに取り組んでまいります。
次に,市民会館の施設と運営についてお答えいたします。
グロービスホールにおける舞台に向かった前方部分の階段については,段差と奥行が一段ごとに違うため,高齢者などが階段でつまづく事案が発生したことから,現在,足元への注意を促すよう転倒防止対策を進めているところであります。
また,令和5年10月に,大型車両待機場におけるトラック・バス等の騒音や排気ガスの臭いなどについて,近隣にお住まいの方々から苦情をいただいたことから,各利用者が利用申請をする際に,長時間エンジンをつけての待機をしないよう注意喚起を行うなど,速やかに対策を講じており,その後は何ら苦情を受けてはおりません。
国道50号に面した3階中会議室につきましては,音響業者からの助言を受けて,遮音性を確保した設計となっております。引き続き,利用者の御希望があった場合は,道路から離れた会議室を案内するなど,より利用しやすい運営に努めてまいります。
今後も,全国的にも人気のあるアーティストの公演を予定しておりますので,訪れた人々に喜びや感動を生み出すような魅力ある公演の誘致を促進するとともに,にぎわいや交流を創出し,地域経済の活性化について,さらに取り組んでまいります。