次に、新市民会館整備計画について伺います。

はじめに、上空デッキについてです。5年前にも浮上し、結局立ち消えになったデッキ計画が、またいきなり出てきて、すでに353億円以上にも膨らんでいる事業費に、5億4千万円もの工事が付け加えられ、本定例会に、水戸市が負担する2か年で3億2900万円の予算が出されていますが、そもそも上空デッキは、これまでの経過をみても、まるで必要性がないものです。

前回のデッキ計画は、新市民会館の設計が決まった段階で出てきました。当時の特別委員会では、計画に反対する私たち以外の議員さんからも、「デッキでつなぐなら設計変更などの影響があるだろう、設計が決まる前に判断すべきではないか」、「これまでまるで議論もしていない、デッキのデの字も出ていないのに、なぜこんな話が突然でてくるのか、議会軽視ではないか」という議論が多々ありました。また、「木のやぐらで囲む特殊なデザインと今の京成百貨店のデザインとをつなぐデッキは、まちのデザインとしても違和感があるのではないか」、「そもそもこんな大きな計画変更を伊東豊雄氏は承知しているのか」という意見も出されておりました。結局は、京成百貨店側の工事に18億円もの負担がかかるのでやれないという結論で断念したわけでありますが、上空デッキは、もともと京成さんから何度も強い要望があったという答弁もされています。なぜ、京成百貨店のためのデッキを水戸市がつくらなきゃならないのかと、多くの市民が怒りの声を上げていました。

ところが、今度は、全部、国と水戸市のお金でつくるから、やっぱりつなぎましょう。京成さんの負担はありませんよ。という話です。ただただ京成百貨店のための税金投入であり、いったいどこまで市民不在の計画なのかと怒り心頭でありますが、市長のお考えを伺います。

また、前回、断念した際には、そもそもデッキが必要だとされた歩行者の通行量についても、結局、「デッキがなくても問題はない、横断歩道と地下道の拡張で十分だ」という答弁をされており、デッキの必要性がないことは、執行部もはっきり認めています。

さらに言えば、デッキを想定していない設計で、すでに工事が始まっています。そのために、昇降の動線や、つなぎ目となるラウンジなどが、中途半端に変更されますが、いまだに新市民会館の完成予定図は、デッキのない見晴らしのいいスタイルのまま公表されています。デッキでつなげば、50号と歩道、さらに1階の店舗部分等にも、明らかに大きな日陰をつくり、新市民会館のファサードの絵が完全に変わるわけで、計画そのものも市民への説明もあまりにずさんですが、いかがですか。また、新市民会館の2階と京成百貨店の2階の高さが違っており、これをつなげば、これまた中途半端な坂道の歩きにくいデッキになるのではないでしょうか。いずれにせよ、まったく必要性がないデッキを、一企業のために税金を使って無理やりつなげるなど、とても許されないものであり、計画の撤回を求めます。

次に、指定管理者制度についてですが、私は、現計画のままの市民会館では、物理的にも営利的な稼働は絶望的だと指摘してきました。その運営を、指定管理で民間に任せれば、管理者はその中で利益を上げる必要があり、わざわざ赤字のリスクをとることはしないと考えます。しかしながら、公立のホールが、自主事業として取り組む文化事業は、そもそも収益や利益を生むためのものではなく、たとえ公演自体が赤字となっても、市民のため、市の文化醸成のために、長い目で培う文化事業として、お金に換えられない価値と理念、長期的な戦略をもって行うものです。そして、自主事業に積極的に取り組めば取り組むほど、経費や赤字はかさんでいくというホール施設の実状は、特別委員会で示された他市事例の資料でもわかるはずです。それでもなお、文化政策として、自治体と住民の文化振興のための事業として取り組むのが、公立ホールの役割であり、市民がホールを持つ価値でもあるわけです。だからこそ自治体が責任と理念をもって直営で運営すべきなのです。

指定管理者が民間事業者であれば、究極的に言えば、なにもしなくても決まった指定管理料が入るわけで、その中から利益をとるのなら、ただ貸館だけを業務として行うのが一番楽ですし、あえて自主事業で失敗する冒険はしないでしょう。結局、新市民会館が文化施設としてはあまり活用されず、講演会や式典などのイベントに時々使われるとしても、それ以外はほとんど開かずの貸館となり、ただただ3億7千万円の指定管理料だけが持っていかれることになるのは目に見えています。なんのための、だれのための市民会館なのかということです。

この時代に、集客でも事業の質でも成功していると評価されている公立のホールは、例えば、いわきアリオスや、南陽市文化会館のように直営で、あるいは小美玉みの~れのように直営に近い市民参加の形で運営し、市民に愛され活用されています。一方で、ただ貸館だけを業者が行うホールは、借り手がなければ開かないハコとなっています。

また、今般のコロナ禍のような状況になったとき、直営ならば、閉めている間の光熱水費、維持管理経費等を最小限に抑えることができますが、指定管理では、管理料はそのまま支出されます。市民会館が使われても使われなくても、指定管理料はかわらない。なら、リスクをとらず最低限の運営で、確実に利益を確保しようと考えるのが、民間のシビアな経営論理です。結局、市民の税金から事業者の利益を生み出すという運営の在り方自体が、必要最低限の支出で効果をあげるという地方財政の本旨をはずれ、毎年約3億7千万円もの支出に市民の理解は到底得られないと考えます。

年次的な収益ではなく、長期的な目線で文化的な価値を高めていく、市や市民の文化を育んでいくことが目的である文化施設の運営にはなじまない制度であり、本市の文化に対する姿勢が問われる問題と考えますが、市長のご見解を伺います。

次に、事業の見直しについてですが、本事業は、このままの計画で強行すれば、本当に将来に禍根を残す大きな負の遺産となると考えます。莫大な借金とほとんど稼働しない大ホール、そしてその維持管理のための毎年の経費、何十年先までも定期的にかかる改修費用、さらには、必要のない上空デッキ…と。もう工事が始まっているから止められないでは、あまりに無責任です。もう止められない、と、オリンピックを強行して今の猛烈なコロナ感染拡大を招いた菅政権の過ちに学ぶべきです。特に、今、このコロナ禍にあって、コロナ前の設計のまま、コロナ以前の希望的集客見込みのままで、工事を強行していること自体が異様です。とにかくつくってしまえば、あとは野となれ山となれでは、高橋市長としても未来への責任が果たせないのではないでしょうか。

そもそも、今、本市は莫大な事業費をハコモノにつぎ込んでいる場合でしょうか。市民にとって目の前の大きな危機であるコロナ対策と、市民会館はコロナ後を見据えた根本的な見直しがなんとしても必要であり、立ち止まって見直す決断を求めますが、お答え願います。

答弁:市長

次に,新市民会館整備計画についてお答えいたします。

私は,県都にふさわしい魅力と活力にあふれる中心市街地の再生に向け,泉町1丁目地区おいて,交流拠点づくりに取り組んできたところであり,泉町1丁目北地区においては県都にふさわしい芸術文化及びコンベンションの拠点となる新市民会館の整備を進めているところであります。

新市民会館は,芸術文化の振興,中心市街地の賑わいや交流を創出するとともに,市民にとって誇りある優良な都市空間の構築を実現する,本市の将来にわたるまちづくりに極めて重要な施設であります。

ご質問の上空通路につきましては,新市民会館,水戸芸術館と国道50号を隔てた南地区の水戸京成百貨店を結び,利用者の安全性・利便性の向上を図る新たな歩行者導線として,泉町周辺地区における南北が一体となった将来構想をもとに,現在の水戸京成百貨店が立地する場所で進めてきた,泉町1丁目南地区市街地再開発事業の計画当初から,設置に向けた検証を進めてきたところであります。

過去においては,橋脚の位置等,解決が困難な課題がありましたが,南北の施設に挟まれた国道50号の管理者である国や県・市が連携して継続的な協議を進めてきた結果,国が歩行者の安全確保の観点から直轄事業として進めることとなり,課題を解決できる手法が見出されたことに加え,施設建築物同士を繋ぐために必要な市の実質的負担分については,国庫補助制度等を最大限活用することで,国の概算工事費5億4,000万円に対して,1億4,364万2,000円で整備が可能となるなど,様々な条件が整った千載一遇のチャンスであったことから,事業化を決断し必要な経費について今議会に補正予算を提出させていただいたところであります。

私は,上空通路の設置により,市民の安全性,利便性の向上が図られるとともに,南北施設の一体化や周辺施設の活性化にも大きく寄与するものと考えており,新市民会館の開館までの整備完了を目指してまいります。

次に,指定管理者制度について,お答えいたします。

指定管理者制度につきましては,公の施設の管理運営に民間の能力を活用することにより,多様化する市民ニーズに,より効果的,効率的に対応し,市民サービスの向上と,経費の節減等を図ることを目的とする制度であります。

新市民会館の指定管理者制度の導入につきましては,興行主催者等との多彩なネットワークを活用した,魅力的な事業の積極的な誘致により,市民に多様な芸術文化の鑑賞機会を提供することが期待できます。また,音響や照明など舞台技術をはじめとする専門的なノウハウにより,市民の芸術文化活動の支援が図れるとともに,稼働率向上や専門的人材の活用など,効率的な運営が図れることから,本年3月の第1回市議会定例会において,条例を議決いただいたところでございます。

本市においては,現在,公募による新市民会館の指定管理者候補者の選定手続きを進めているところであり,市民の芸術文化の振興,さらにはにぎわいの創出に向けて,ふさわしい候補者を選定し,議会へ提案してまいります。

私は,多様化する社会の中で,芸術文化は人々の心を豊かにし,感動や活力を生み出すものと認識しており,コロナ禍において,市民の誰もが芸術文化を身近に親しめる施設として,新市民会館の必要性がますます高まっていくものと考えております。

本事業につきましては,令和5年7月のオープンに向け,歩みを止めることなく万全の準備を進め,コロナ禍を乗り越え,多くの市民に感動や希望を与えられる施設づくりを実現し,まちのブランドイメージを高めてまいります。