最後に動物行政について伺います

4月から中核市となり、これまで県で行ってきた動物行政を、水戸市が担い取り組むことになりますが、残念ながら茨城県の動物行政は全国的にもかなり遅れています。殺処分ゼロを目指す条例がつくられても、現場では依然として殺処分ワースト時代と変わらない体制のまま、漫然と殺処分が行われ、殺処分を回避するための施策が遅々として進んでいないのが現状です。驚くことに、収容動物のオスメスを間違えることまで度々起きているのです。

広範囲にわたる県単位での殺処分ゼロは、まだ困難な課題も多いわけですが、政令市や中核市など、市単位での殺処分ゼロは、先進的な取り組みで、実現している自治体が増えています。水戸市もせっかく中核市として名乗りをあげるのですから、ここはしっかりと殺処分ゼロを目指していくべきと考え、質問をいたします。

まず、犬の殺処分ゼロへの取り組みについて伺います。県の動物指導センターに収容される犬のほとんどは元々だれかに飼われていて迷子になったり捨てられたりした犬で、それが一部野犬化して繁殖し野山で増えてしまう例などがありますが、水戸の場合は、他の中核市同様、危険な野犬が繁殖するような環境にはないわけですから、迷子や捨て犬を確実に所有者にもどすことができれば、殺処分などする必要もないのです。まず、市内のすべての犬が、どこの誰が飼っている犬なのかをきちんと把握すること、放し飼いや捨て犬をさせないことです。所有者の明示と係留義務の徹底、そして飼育放棄を防ぐために、市としてどう取り組むのか伺います。

また、市民が飼えない命を増やさないということでは、現在行っている不妊手術の補助制度のさらなる拡充をもとめます。開設する動物愛護センターでは、こうした避妊去勢手術はできるのでしょうか。啓発と4000円の補助だけではなかなか進まない不妊手術が、徹底して行われることこそ殺処分ゼロへの一番の近道だともいわれます。飼い犬の手術費用がなかなか厳しいという世帯には低額または無料で、センターで手術するなど、センターを持つ市だからこそできる取り組みも必要ではないでしょうか。

 

動物愛護センターの運営管理については、例えば犬の場合、水戸ではこれまで年間約60頭を、県のセンターに送っていましたが、県のセンターに送るということは、残念ながら殺処分に直結するということです。県では収容動物の返還・譲渡といっても、短い公示期間で広く県民に開かれた情報発信をするでもなく、返還率はわずか数パーセント、1割にも満たないのです。譲渡も限られた保護団体頼みで、収容数が増えれば機械的に殺されます。

茨城県で殺処分される犬をレスキューする活動を続けている保護団体の方に聞けば、「殺されていい犬などいない、どんな犬でも保護して譲渡につなげるチャンスがある」といわれます。実際に保護シェルターに足を運ぶと、センターから引き出され殺処分を免れた犬たちがいきいきと生き、さまざまな出会いにより新たな家をみつけ巣立っていく犬や、医療や介護を受けながら安心して静かに過ごす犬、人の手を知らずに育った野犬がだんだんと人になれていく姿など、多種多様な命の在り方を目の当たりにすることができます。

水戸市はこれから、この、年間およそ60頭を県に送ることなく、殺さずに運営できれば、すぐにもゼロが実現できるわけです。この間、さまざまな自治体の取り組みを調べてきましたが、殺処分やむなしと考えるか、最大限生かすための方策を考えるか、殺処分ゼロを実現している自治体とそうでない自治体の違いは、それにつきると思います。徹底的に返還に取り組む、広く最大限の努力で譲渡につなげるという現場の姿勢、なにより収容したすべての動物を生かすための施設とすることです。

もうまもなく開設されるのに、実際の運営、管理の方針や具体的な体制について、委員会にもなんの報告もなされませんが、ぜひとも胸をはって全国に発信できる動物愛護センターにしていくべきと考え、いくつか提案をいたします。

1つはドッグトレーナーの常駐と、咬傷犬等を扱えるボランティアとの協力です。県のセンターには「噛む、キケン」といったレッテルをつけられ真っ先に殺処分対象にされる犬が多くいますが、実際には犬の方にも噛む理由があり、きちんとしたトレーニングや安心できる環境があれば、飼えないキケンな犬などいなくなるということです。すべての収容犬を生かし譲渡につなげるためには、犬の馴化への取り組みが愛護センターに必要不可欠です。

また、老犬の看取り看護や傷病犬の保護飼養ができる民間団体等との連携や一般家庭で預かり飼育ができる市民ボランティアの登録制度なども必要と考えます。どんな犬でも時間をかけてマッチングをすれば譲渡が可能でも、センターのスペースには限りがあり、なかなか譲渡につながらない犬や、高齢や病気等で飼養が難しい犬も出てくるでしょう。殺処分やむなしで県に送ることなく、ボランティア団体や市民と広く協力しながら水戸市独自の殺処分ゼロ、市民協働の動物愛護の実現をもとめます。

ものいえぬ動物の命を大切にする自治体は人の命も大切にする。中核市となることを契機に、ぜひとも命にしっかりと向き合う市政となることをもとめ、私の質問を終わります。

答弁:保健福祉部長

土田議員の一般質問のうち,動物行政についての御質問にお答えします。

初めに,殺処分ゼロへの取組につきましては,「動物愛護の普及啓発」,「適正飼養に関する普及啓発及び指導」などに取り組んでまいります。犬の登録と鑑札の装着の徹底については,狂犬病予防注射の機会などを通じた周知のほか,今後は,マイクロチップ装着についても周知を図るなど,取組を推進してまいります。終生飼養についても,動物愛護の普及啓発として,小学校における動物とのふれあいを通じて命の大切さを学んでもらう機会を提供するなど,市独自の動物愛護センターを活かした取組を進めてまいります。

また,不妊去勢手術の補助につきましては,保護される犬を増やさないため,手術費の補助を継続するほか,譲渡対象となる保護犬について不妊去勢手術を実施してまいります。さらに,来年度からは,新たに飼い猫についても手術費の補助を実施してまいります。

次に,動物愛護センターの運営管理につきましては,譲渡会を積極的に開催していくとともに,獣医師のほか動物の取扱い経験がある者を配置し,専門業者や獣医師会,ボランティアなどとの協力及び連携を図りながら,適正な飼養管理及び返還・譲渡の推進に努めてまいります。