次に文化行政について伺います。

まず、市立博物館についてです。歴史と学問の街である本市にとって、公立の博物館を持っていることは大変重要で誇るべきことであります。しかしながら、県都水戸の博物館として、市民が誇れる現状とはいえないと感じ、またそういう声が多く聞かれるため、さらなる充実と改善をもとめて質問します。

まず、施設の老朽化・狭隘化は、誰の目にも明らかでありますが、博物館協議会で示された来館者のアンケートで、建物どころか、古すぎる展示ケースの破損・不具合を心配する声があったことです。貴重な資料の保存・保全に重大な瑕疵を与えるもので、ただちに改善すべきではないでしょうか。展示ケースの更新、確保にどれほどの予算が必要なのか、市民にこんなことを心配されている博物館が、郷土の誇り、市民文化の拠点となれるのか、恥ずかしい限りであります。

また、現在、博物館には4つの部門がありますが、それぞれの部門の担当学芸員がひとりずつしかいません。多岐にわたる専門性が必要であり、また継続性が重要な仕事です。それを、たったひとりでやっている。さらに年3回行われている展覧会の際には、担当を離れて全員がその運営にかかりきりになり、その間、それぞれの部門の仕事を止めざるを得ないのです。現場はギリギリの人数で工夫しながらがんばっていますが、年間を通し、集中して部門研究に取り組めない、また、学芸員が退職すれば、たちまちその部門はまた一からのスタートとなり、それまで積み上げてきた取り組みが継続されないということさえ起きかねないのです。各部門ひとりの配置では、ひとりにかかる負担が大きすぎ、現場で後継者を育てることもできません。最低でも複数の学芸員が必要ではないでしょうか。

また、博物館の最大の役割は、単に目に見える展示ではなく、資料の収集と保全・そしてその調査研究といわれます。市立博物館には5万4千点もの資料が収蔵されているとのことですが、それらを安全に管理するには程遠い保管スペース不足。これは「日々、市民の財産が損なわれていると同じことなのだ」と、博物館協議会の専門家の方に厳しく指摘されました。博物館の中は収蔵庫がまるで足りず、芸術館や埋蔵文化センターなど、市内のあちこちに間借りをして資料を保管しているのです。学芸員は分散している保管場所を行ったり来たりしながら仕事をしている。こんな状態で、貴重な資料を安心安全に取り扱い、将来にわたって大切に活用できるのか、と、疑問をもたれるのも当然です。

さらに、博物館予算には資料購入費がなく、市民からの寄贈のみの受け身の収集しかできていないということも、本市がいかに博物館にかかる予算をきりつめ、市立博物館を持っていることの重要性、歴史や文化の価値を理解していないかの証左ではないでしょうか。

魁のまち水戸というなら、郷土の誇りとして、文化の拠点として、県都にふさわしい充実した博物館となるよう、予算と学芸員の大幅な拡充をもとめるものですが、お答え願います。

答弁:教育部長

次に,市立博物館についての御質問にお答えいたします。

市立博物館につきましては,市制施行90周年記念事業として,

昭和55年7月に開館した,自然,歴史,民俗,美術の4部門からなる,県内でも数少ない総合博物館でございます。

博物館は開館以来,郷土の歴史や文化,自然にふれることができる機会を提供し,市民の主体的に学ぶ意識を醸成するため,特別展の開催や常設展示の充実に努めてまいりました。本市の文化の発展にとって博物館の果たすべき役割は大きく,さらにその魅力を高めていくことが重要であると認識しております。

こうした認識のもと,博物館においては,各部門に学芸員を配置し,適正な体制を維持しながら,特別展や体験教室などの事業を積極的に行い,郷土の魅力を知る機会の創出を図っているところでございます。昨年秋には,水戸東照宮創建400年記念特別展「徳川頼房」を開催し,これまで知られることの少なかった水戸藩初代藩主の生涯を広く発信し,大きな反響をいただいたところであります。

また,博物館では郷土に関する資料の収集にも注力しており,これまでに,横山大観の「水温(ぬる)む」をはじめ,4部門で計5万点以上にわたる資料を収集してまいりました。収集に際しては,寄贈や寄託によるもののほか,県外流出し,所在不明になってしまうおそれがあった水戸出身の女性画家・櫻井雪保(さくらい せっぽ)の作品「龍虎図屏風(りゅうこずびょうぶ)」の購入など,水戸ゆかりの資料の保護と所蔵品の充実に向け,水戸市立博物館資料収集専門委員から助言をいただきながら,適宜資料購入を進めております。

一方で,博物館は開館より40年以上が経過し,施設や設備の老朽化が進行しているなどの課題も生じております。

このため,本市におきましては,平成28年度から29年度にかけて施設を休館し,耐震化を主とした大規模改修を行い,改善に努めてまいりました。また,消防設備や空調等,資料の保全に欠かせない設備についての修繕も適宜進めております。来年度には展示ケースの改修を予定しており,貴重な資料を将来の世代に守り伝えるための取組を推進してまいります。

今後につきましては,展示の内容や調査研究をより一層充実させ,市民の皆様に親しまれる,魅力ある博物館となるよう努めてまいります。