次に、防災行政については、特に昨年の台風・水害を踏まえての対策を伺います。まず、『那珂川緊急治水対策プロジェクト』の進捗と今後の浸水対策について伺います。大きな被害をうけた地域では、まだまだ復旧道半ばという中で、コロナ拡大が起き、目の前に迫る台風シーズンに不安が募っています。先月行われた国交省による国田地域の説明会に、私も参加しましたが、体育館いっぱい100名を超す皆さんが集まり、熱心に意見が交わされました。国田地域では、今回越水した無堤防部分の築堤を長年にわたり要望し続け、まさにそこから大きな被害となったのです。先に発表された緊急プロジェクトに、この国田側の対策が入っていなかったことから心配をしていましたが、今回、『国田地区浸水防止対策(案)』が示されました。堤防の代わりに擁壁や土地のかさ上げで対岸の堤防と同じ高さにする、堤防と同等の効果があり、令和6年までに行う、とのことですが、擁壁の強度や耐久性・安全性、また、かさ上げといってもどこまでできるのか、どうやるのか、様々な質問が出ていました。しかしながら、調査・測量をこれから行い、それによりどう作れるのかを考えるという回答で、スピード感に欠ける印象でした。築堤ではなく、民地に工事が入るということで、実際にどれだけ効果があり、どれだけ時間がかかるのか、今後の見通しについて伺います。浸水対策が完成するまでにも、台風は毎年やってきます。まず目の前の台風に備えること、地域との話し合いを密にすることが大切ですが、その点も合わせてお答え願います。

避難所と避難につきましては、昨年の台風の際にも防災危機管理課をはじめ全庁一丸となっての取り組みで市民に応えていたこと、避難所の体制や災害避難の計画をバージョン・アップし続けていることなど、大変進んでいると実感しています。先日、九州地方を通った台風10号の報道で、避難所の様子などを見ますと、まだまだ多くの方が皆で雑魚寝するような状態だったりして、改めて本市の取り組みには敬意を表したいと思います。コロナウイルス感染拡大で、感染症対策や避難所の収容人数など大きな改定が求められますが、台風10号では、各地で避難所が定員いっぱいで入れず、右往左往する避難者が多数出ていました。本市でもホテルとの協定など、新たな取り組みを進めていますが、いつまた大きな台風や想定を超える集中豪雨が来るのかわかりません。コロナの収束もいつになるかわからず、緊急治水対策も完了予定は5年先です。その中で、まず目の前の避難について、どう徹底し市民をまもるのかを伺います。

答弁:市長

次に,防災行政についてのうち,台風・水害対策についてお答えいたします。

令和元年の台風19号により受けた甚大な被害からの一日も早い復旧・復興に向けて私は,会長を務める「那珂川改修期成同盟会」をはじめ,機会あるごとに,迅速かつ抜本的対策が図られるよう,国への緊急要望や早期復旧に向けた活動に積極的に取り組んでおります。

本年1月には,私自らが出席した「久慈川・那珂川流域における減災対策協議会」において,本川・支川が一体となり,令和6年度までに国・県合わせて約665億円  にも及ぶ各種対策を行っていく「那珂川緊急治水対策プロジェクト」を取りまとめ,様々な施策に取り組んでいるところであります。

本プロジェクトにもとづき,那珂川の決壊箇所については,本復旧に向けた工事が進められているほか,同様に被災した県管理河川である藤井川,田野川,西田川についても,本年7月末までに本復旧がすべて完了し従前以上の機能が回復しております。

また,河川の流下能力の向上を図るため,飯富町などでの河道掘削や下国井町における河川区域内の樹木伐採が行われているほか,JR常磐線の下流域で事業中で ある大野築堤につきましても,完成に向け事業が加速し,加えて,新たに吉沼地区の築堤が位置付けされ,現地調査に着手するなど流下能力の向上に向けた施策が行われております。

さらに,水府地区,中河内町付近や城東地区においては,既存堤防の強化も進められ,さらに,那珂川左岸側の国田地区については,浸水の恐れがある区間について浸水防止対策を図っていくこととなったところであります。

本市の上流域においては,常陸大宮市における大場遊水地や那須烏山市における 霞堤の整備を進めていくこととしており,河道の流下能力の向上に向けた施策を合わせて行うことで,台風19号と同規模の降雨時においても,那珂川本川の堤防 天端より1メートルほど下の位置まで水位を下げることが可能となり,越水等被害の軽減が図られることとなります。併せて,家屋浸水を発生させない対策を進めていくため,飯富地区においては,浸水被害に見舞われた地域の皆様との意見交換会を開催し,将来的に,より治水上安全な地域となるよう,地元の皆様とともに地域の実情に合った最善策を作り上げてまいりたいと考えております。

また,ハード対策との両輪となる減災に向けた更なるソフト対策につきましては,国田大橋の上下流に2台の監視カメラが設置されたほか,常磐自動車道那珂川大橋 下流両岸の堤防天端へ浸水センサーが設置され,越水や決壊の迅速な把握に向けた 実験が進められております。

今後とも,毎年襲来する台風に備え,私自らが先頭に立ち,安全・安心に暮らせる災害に強いまちづくりの実現に向け,全力で取り組んでまいります。

次に,避難対策に関する御質問についてお答えいたします。

本市におきましては,昨年の台風19号の後,議会の皆様からの御助言をはじめ,被災された方々からの聞き取り調査,自主防災組織の皆様との意見交換などにより,市民の皆様から多くの御意見をいただき,市民協働による実効性のある避難体制づくりに取り組んでいるところでございます。

これまで,台風19号の検証を踏まえ改定した洪水ハザードマップの配布,市民の皆様へのマイタイムラインの作成支援とともに,避難場所の拡充を図るため,緊急避難所として,水戸第二高等学校,附属小学校の追加指定,34の施設が加盟している茨城県ホテル・旅館生活衛生同業組合水戸支部との,避難者の受入れに関する協定締結など,水戸市が一丸となり台風に備える体制づくりを強化しております。

コロナ禍の避難所運営につきましては,市民の皆様が避難所において感染することに不安を感じ,避難を躊躇することがないよう,国内で感染者が確認された段階から検討を始め,他の自治体に先駆け,新たな指針を5月に策定し,数多くの報道機関に取り上げていただいたところであります。

指針には,避難準備・高齢者等避難開始情報の発令段階から可能な限り多くの避難所を開設すること,感染防止対策を図るため,簡易間仕切りを活用すること,さらには,発熱,咳等の症状が出た方のための専用のスペースを確保することなどを定めており,避難者の安全はもちろん,安心して避難していただける環境を整えてまいります。

また,台風19号の対応においても効果を発揮した防災ラジオの一層の普及に努めるとともに,避難指示の発令時などにおいて,避難を呼びかける言葉とともに,緊急性を伝えるため防災行政無線によりサイレンを鳴らすこととし,9月1日の防災の日には,実際にサイレンを鳴らし,市民の皆様に確認していただき,有用性を検証したところであります。

さらには,市民の皆様へ,これまで以上に早い段階での避難情報の提供に向けた取組として,新たな洪水予測システムを開発しております東京大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)のチームに,本市が実証研究の立場として加わり,最大39時間先までの洪水リスクの予測情報を試験的に提供いただけることとなりました。既に,最新情報を確認できる環境が整っておりますので,今後,台風が発生したときには,国や県からの様々な情報に加え,本システムから得られる情報も参考にしながら,避難対策の強化につなげてまいりたいと考えております。

引き続き,市民の皆様に分かりやすい情報提供に努め,市民協働により共に備え,共に助け合える環境のより一層の充実を図るとともに,洪水,感染症など,様々な要因が複合的に重なる事態にも対処できるよう,万全の対策を講じてまいります。