次に、新市民会館整備計画について伺います

まず、事業費についてです。高額で設計契約をした伊東豊雄事務所との関係について伺います。4月に、伊東豊雄事務所が、1320万円の備品整備検討委託を随意契約で請け負いました。特別委員会で、ぎふメディアコスモスの視察にも行きましたが、建物だけでなく中にあるものすべて、時計の針まで伊東氏のデザインでした。そもそも伊東豊雄建築は、内装、備品を含めトータルでデザインされ、だからこそ伊東豊雄作品なわけです。それが、新市民会館は、およそ6億円もの設計契約とは別に、一昨年はサイン設計、そして今度は備品整備検討と、次々に契約が追加され、随意契約でいつのまにか落札されている。次は、備品デザイン、製作、調達納入…と、どこまで続くのでしょうか。新市民会館は「世界の伊東豊雄がつくる」と、鳴り物入りで進められてきたものです。当然、トータルデザインで受ける仕事であり、こうした契約の二重取り、三重取りが続いていること自体が、市民感覚からかけ離れたずさんなお手盛りではないかと考えますがいかがか、お答え願います。

また伊東氏は、特別委員会で、地熱利用や地下水の利用などで大幅にランニングコストを削減できるといっていましたが、それらはどうなったのか。ようやく示された維持管理費(光熱水費)は、他自治体の同規模施設や既存の市施設の経費から比較検討して算出したと説明され、伊東氏が力説していた、伊東設計だからこその経費節減については一言もありませんでした。一体どういうことかご説明願います。

また、この間、新型コロナ感染症の拡がりで、世の中が一変しています。コロナ前とは、すでに施設の在りが違っています。例えば、コロナの影響を調査するため行われた東京都生活文化局や民間の劇場の大規模アンケートでは、観客の一番の心配は「換気」という結果が出ています。これからのホールには、そうした新たな環境整備が求められます。今、コロナ前の設計のままで突き進むこと自体が異常であり、いったん立ち止まって見直す必要があるのではないでしょうか。

次に、市民負担についてですが、まず、完成後、何年間使うつもりか?伺います。建設にかかる352億円以上もの事業費に加え、市民には将来にわたって大きな負担がのしかかる施設です。しかも、市民や文化への有用性ではなく、再開発事業と大型建設事業にかかわる一部の利益のために強行されてきたといわざるを得ない事業で、莫大な借金に加え、積み重なる維持経費が、税金で賄われる。すべてが市民の負担です。子どもたちや、今まだ生まれていない未来の世代にまで重くのしかかる負債、まさに負の遺産をつくることになります。

指定管理料として示された年間の管理運営費がおよそ3億7千万円、これは日に100万円強です。使っても使われなくても、毎日100万円の税金が投入され続ける、市民が納得できる支出でしょうか。

また、新市民会館には、約300本もの大きな木の柱、木柱が使われることになっています。この木柱について、伊東氏は、10年毎に大規模なメンテナンスが必要と言っていましたが、それにどれくらいの費用を見込んでいるのか。また、昨年、現場に建てられた木柱の見本(モックアップ)は、1年もたたずに撤去されましたが、一体どんな経年変化を検証できたのか。そもそも無駄なデモンストレーションだったのではないか、お答え願います。

特殊な木材を多用する建物自体のメンテナンスに加え、大きなホール施設ですから、おおむね10年毎に舞台設備の大規模改修が必要です。やはり伊東豊雄設計の「まつもと市民芸術館」では、まず10年目の改修で20億円かかったとのことです。これが、50年使うなら5回、60年なら6回必要となり、当然、数十年の年数がたてば老朽化が進み、その改修費もさらに増大していきます。現計画は、こうした将来負担の試算や検討すらしていないのではないでしょうか。ただ建ててしまえばなんとかなるという無謀な計画で、完成後も数十年にわたり莫大な経費がかかり続けることに対し、どう責任が取れるのか(本当に皆さんに伺いたいです)。始まってしまったから止められないでは、本市の歴史と将来世代に禍根を残します。まず工事中止を求めます。今、止める損失よりも、将来にわたってえんえんと続く市民負担の方が大きく、理解されないものと考えるからです。そして、市民会館は、将来にわたって市民に活用され愛される、市の文化に有用な施設へと計画の根本的な見直しをすべきです。

終わりの見えないコロナ禍で、市民の暮らし、まちの経済を第一に支えることこそ本市に求められており、まちなかの疲弊をさらに深刻にし、明らかに時代にそぐわない無駄遣いの再開発事業に支出を続けている場合ではありません。一刻も早い工事中止と計画見直しの決断を求めますが、ご答弁願います。

答弁:市民協働部長

次に,新市民会館整備計画について,お答えいたします。

新市民会館を含む施設建築物の設計業務につきましては,泉町1丁目北地区市街地再開発組合と伊東豊雄建築設計事務所・横須賀満夫建築設計事務所共同企業体が委託契約を締結し,平成31年3月に業務は完了しております。

備品につきましては,再開発組合ではなく,新市民会館の所有者である市が費用を負担すべきものであることから,備品整備検討委託を市が発注することは合理的であると考えております。また,新市民会館の設計コンセプト,工事の内容などを熟知している施設建築物の設計者を,委託契約の相手方としたところでございます。

次に,空調設備の熱源につきましては,平成29年1月30日開催の市議会特別委員会において,参考人である設計者の伊東豊雄氏が地中熱の活用について発言した後,さらに検討を加え,電気,ガスのほか,地下水を活用することにより,効率的な省エネルギー化を推進し,光熱水費の抑制を図ることとしております。

また,換気につきましては,建物全体で機械設備による十分な換気の性能を確保しており,窓の開閉が可能な会議室やスタジオなどにおきましては,定期的な窓の開け閉め等による外気の取り入れを利用者に推奨し,安心感を得られる施設運用を図ってまいります。

次に,開館後の維持管理費につきましては,新市民会館の耐用年数を60年と見込んでおり,長期間にわたり適切な維持管理が必要であると認識しております。したがいまして,類似の文化施設を参考とし,設計者等から御助言をいただきながら,計画的な施設の維持管理を行い,できる限り大規模修繕等に係る経費の抑制に努めてまいりたいと考えております。

最後に,建設現場に設置していた実物大の模型,いわゆるモックアップにつきましては,工事の効率化を図るため,施工手順や施工精度を確認するとともに,工事期間中の木材の保護方法を検討・選定し,成果を得たものです。今後とも適切な事業の実施に努めてまいります。