次に新市民会館整備計画について伺います。

(1)2000席大ホールと経済効果については、まず、この市民会館に、もしも有名アーティストが来たり、大きな公演が来て盛り上がれば、なにか大きな収益があるかのようなミスリードがいまだにされておりますが、その点を確認します。

貸館事業の収益は、つまり利用料金です。ホールがいっぱいになろうが、ガラガラだろうが、使われれば同じ料金が支払われるという話で、盛り上がれば潤うとか、経済効果があがるというものではありません。2000席ホールで、例えば、休日に2回公演のコンサートが行われ、5千円のチケットが完売したとすれば、チケット収入は2000万円ですが、これは借り手である主催者の収入であり、ホールにはただその1日分37万3000円の利用料金が入るだけです。結局、年間何日、借りてもらえるのか、市民会館の収益を左右するのは稼働率ですが、それは、利用料金×何日、と枠が決まっており、いっぱい入れば夢のようにお金が落ちてくるという話ではありません。しかも、現計画の立地と設計では、この利用料収入さえ見込めないと考えます。今、2000席ホールの需要がどのくらいあると考えているのか、どんな根拠で稼働率70%が見込めるのか、を、お答え願います

借り手側の需要は、例えば、音楽業界は、今時、2000席のコンサートは満席になれば収支がトントンかギリギリ赤字かというキャパで、コンサートツアーなどは5000席以上のアリーナなどにシフトしています。まして、特段、特長があるわけでもない多目的ホールで、ツアーバスやトラックも停められない使い勝手のよくないホールでは、わざわざ有名アーティストが来たがる理由がありません。さらに、観客の需要の問題もあります。茨城県は、残念ながら、歴史的に客席がなかなか埋まらない地域であり、県民文化センター大ホールで満席になる公演は年に数回、あるかどうか、それが実情です。大きなホールができたからといって、お客が夢のように増える要素はありません。チケットがさばけず空席の出るホールに、有名アーティストや大きな公演は来ません。

周辺への経済効果についても、劇場施設の特性を理解していない夢物語です。JTB総合研究所が、多岐にわたる項目で「ホール・劇場の調査・分析」を行っており、その報告書で、消費者動向調査の中に「ホール・劇場での公演がセットになった観光ツアーやプログラムがあった場合、利用したいと思いますか」という設問があり、これに半数近くの人が「利用したくない、公演だけに行きたい」と回答し、「地域観光も組み込まれたツアーがあれば利用したい」とか「ホール近くの名所や街歩きツアーがあれば利用したい」とした人は、複数回答でも2割にも満たないのです。ホール施設というのは観客にとって特別な空間であり、“ついでに街歩き”、“ついでに観光”という場所ではないのです。経済効果や回遊性、にぎわいづくりという観点が根本的にずれていますが、いかがでしょうか。

今回、ようやく示された利用料金も疑問だらけです。まず、市民会館は市民のための施設のはずですが、市民利用の枠組みがありません。これほど多額の市民負担でつくる施設です、営業利用と市民利用では料金設定を変え市民活動に貢献すべきです。また、これまで私は、元の市民会館のように1000席程度の中規模ホールが、水戸市には必要不可欠であり、その早期実現をもとめ続けてきましたが、「客席の一部使用で対応できる」「元の市民会館のように利用できる」と、答弁をされてきました。ふたをあけてみれば、部分使用の料金は、1階席のみの利用で10分の8、1・2階席では10分の9という設定です。客席を減らしても、8割9割の料金を支払うのでは、全部借りるのと大差がなく、半分のキャパで使いたい利用者にとっては割高です。結局、ほとんど使われないと思いますが、いかがでしょうか。

(2)駐車場および車両と人の動線について、これまで、公演やコンクールなど、ホールを使う側、主催する側の車両についての質問をしてきましたが、まともな答弁がいただけず、らちがあかないので、今回は、観客を乗せた車両や動線について伺います。

例えば、2000席のホールで大きな演説会が行われるとしたら、全県からバスがやってきます。1台の大型バスに50人が乗るとして、30台40台からのバスが押し寄せ市民会館前で乗り降りすることになります。学校行事や式典などでも同様に大型バスが連なってくるでしょう。その際、どこでどう車と人の流れをさばいて時間内に客席に入れるのか、また終演後にどうやって観客を帰せるのかを伺います

周辺道路が大型バスで詰まり、交通マヒが起きることは明らかですが、時間差で乗り切れるとか交代で入れ替えるとか、実現不可能なごまかしではなくお答え願います。そして、その時同時に京成百貨店と芸術館、さらに東町アリーナでもイベントがあったらどうなるか。それこそ、市民会館と関係のない多くの市民を巻き込んで大混乱、大迷惑となるのではないか、その責任をどうとれるのかもお答え願います。

(3)最後に将来負担については、これほど現実を直視せず、根拠のない願望だけで強行し、莫大な借金と将来負担を市民に押し付ける現計画は、本当に今立ち止まらなければ、取り返しのつかない大失敗、負の遺産になります。建設工事が始まっても、今なお市民の理解が得られていないことは明白です。機運が盛り上がらない、とか、市民に期待感を持ってもらう方策を考える、とか、つまりは現計画の不合理性を表しているのではないでしょうか。本当にいい施設で、未来に期待ができるなら、市民は歓迎します。大きな決断がもとめられますが、今、計画の見直しをすべきです。

コロナ禍での税収減がこの先どれだけ続くのかわかりません、国の交付金、補助金をあてにした借金も、今後どうなるかわかりません。放漫な税金支出を重ねている場合ではなく、市民に説明のつかない再開発事業はただちに中止し、新市民会館は、文字通り市民とともにつくる市民のための文化施設として、まさに「市民協働」で整備することを求めますが、お答え願います。

答弁;市民協働部長

次に,新市民会館整備計画について,お答えいたします。

新市民会館の大ホールにつきましては,催しの規模や主催者の御要望に合わせて1階席のみ利用,1・2階席までの利用,全席利用と使い分けが可能であり1,000人から2,000人規模の催しにも柔軟に対応できる仕様としております。

また,舞台につきましては,式典や講演会などで使用する標準的なプロセニアム形式のほか,コンサート形式,演劇やロック,ポップスの演奏会等で使用する前舞台形式など,さまざまな用途に対応できる設計になっております。

設備につきましても,高い性能を備えた音響,照明等の設備を設置するとともに,楽屋やリハーサル室などの機能を充実させていることから,主催者や来館者にとって利用しやすい大ホールとなっていると考えております。

本定例会に提出しております「水戸市民会館条例」の利用料金につきましては,旧市民会館や茨城県立県民文化センターに加え,施設規模が同程度の公立文化施設のほか,民間施設の使用料を踏まえて算定したものであり,適正な設定であると認識しております。

これらのことから,本市としましては,『水戸市新市民会館事業推進計画』でお示ししている稼働率70パーセントの実現は十分可能であり,より多くの方々に利用していただくことが,利用料金収入の増加につながるものと考えております。

また,新市民会館においてさまざまな事業を展開することにより,市内外から来館者を呼び込み,宿泊,飲食,交通機関の利用,観光土産品等の買物消費を促進するなど,新たな交流やにぎわいによる経済波及効果が期待できると考えております。

経済波及効果につきましては,産業連関表を用いて推計することが一般的であります。そこで,施設の管理運営費,来館者や公演主催者の消費支出等の額を基に,茨城県が作成した産業連関表を用い,県全体の波及効果として48億3千万円と試算したものであります。

次に,駐車場及び車両と人の動線について,お答えいたします。

多数のバスの利用が見込まれる催しの開催時には,周辺道路における車の往来に支障を来さないよう,一定の時間内にバスが集中しないよう運用することが重要であると認識し,これまでも,関係団体,水戸芸術館等と協議を重ねているところであります。引き続き,催しの内容や規模に応じた車両の動線を始め,人の乗降,誘導方法等についての検討を進め,催しの開催時における円滑な交通の確保に努めてまいりたいと考えております。

新市民会館の整備につきましては,芸術文化の拠点形成を図り,本市の中心市街地でのにぎわい,交流を創出するとともに,市民にとって心の豊かさや優良な都市空間の構築を実現するものであり,本市の将来にわたるまちづくりに極めて重要な事業であります。

本市としましては,新市民会館の整備によって,市民サービスの低下を招くことや,将来世代に過大な負担を残すことがないよう,サービスの充実を図りながら健全な財政運営に努めてまいります。

本事業につきましては,昨年4月から本体工事が始まり,着実に前進しているものであり,引き続き,市街地再開発事業の施行者である泉町1丁目北地区市街地再開発組合と連携を図りながら,事業の推進に向けて全力で取り組んでまいります。