2023年12月議会 代表質問と答弁 原子力行政について

最後に原子力行政について東海第二原発再稼働反対の立場から質問します。

始めに、東海第二原発の防潮堤の施工不良について質問です。今年の9月、現場で工事に従事していた人から東海村の共産党のおおな議員に、工事には施工不良がある、防潮堤の取水口付近の防護壁を支える基礎部分に隙間や鉄筋の変形が生じている、との内部告発がありました。

私達はすみやかに内部告発者からその内容を聞き取り、共産党の江尻かな県議などが事実を確認するために日本原電に質問書を提出しました。しかし期日までに回答がなく、日本共産党が10月16日、施工不良について記者会見を実施し、これらの事実を明らかにしました。

すると原電は同じ日にあわてて施工不良を認め、工事を中断していると公表しました。それがこの写真です。しかし原電は南基礎のコンクリートの未充填による隙間と鉄筋の変形だけを認めましたが、北基礎の鉄筋が岩盤まで到達していない事は、いまだに公表していません。

地震や津波対策として不可欠で、要となる防潮堤に施工不良が明らかになったのは、極めて重大です。

規制庁担当者は防潮堤の検査は工事完了時に行う、と説明していますが、隙間があっても、鉄筋が曲がっていても、基礎が岩盤まで届いていなくても、コンクリートを流し込んだらもう見えないので確認のしようがありません。規制庁は書類審査や説明で確認する、としていますが、はたしてそれで安全は確認できるのでしょうか。

安全性が疑われるこの施工不良について市長はどのように考えますか、お答え願います。

しかも原電は6月には施工不良について把握して工事を中断していたにもかかわらず、じつに4か月間も公表していなかったのです。その最中の7月14日には高橋市長も行かれた6市村長の現地視察の際に原電は「工事は順調に進んでいます」として施工不良や工事の中断については、一言も説明しませんでした。こんな原電を市長は信用しているのでしょうか。

原電は「隠蔽ではない」と言っていますが、内部告発がなかったらこの問題を公表したでしょうか?

市民からは、「これで防潮堤の役割は正しく果たせるの? 安全を軽視しているんじゃないの? 来年9月の再稼働に間に合わせるために、いそいで無理したり、誤魔化したのか? これはまさに隠蔽じゃないか!」との声があがっています。東海第二原発はこれまで工期を2回延長しており、内部告発者も工期最優先で進めたことが施工不良の一番の要因と訴えています。

今回の防潮堤の施工不良に対する疑念や市民の心配する声を市長はどのようにとらえているのでしょうか?答弁願います。

次に放射性物質の拡散シミュレーションについてお聞きします。

県は東海第二原発が事故を起こした場合に放射性物質がどのように拡散するのか、原電が作成した予測を11月28日に公表しました。

今回の予測では住民避難は最大で17万人と試算しています。しかしこれは特定の気象条件のもと、あくまで限定された例にすぎません。

風向きの変化や降雨、事故の規模などで対象範囲が広がる可能性が大いにあり、拡散の範囲を過少評価しているのではないかと考えますがいかがでしょうか?

水戸市は30キロ圏内で最大の人口を抱えており、事故の規模や気象条件によっては市全域の27万人がすみやかに避難の対象となる可能性があります。

知事も条件設定次第で変化しうる、と県議会で述べましたが、市長の見解を伺います。

さらに避難指示の条件の1時間あたり20マイクロシーベルト以上というのは、実に現在の空間線量の400倍もの値です。

助産師として働いてきた私は、妊婦さんや赤ちゃん、子どもへの影響がどうなるのか、大量に被ばくさせながら避難させるのか、と考えたらとても受け入れられません。

市長は市民を被ばくさせながら避難させても良いとお考えなのでしょうか?

安全対策よりも工期最優先、不都合な情報は隠蔽し、放射性物質の予測も小さく見積もるなど、そんな原電に原発を動かす資格はないと考えます。

東海第二原発は、再稼働は中止し、廃炉するべきだと考えますが市長の答弁を願います。

以上で質問を終わりますが、答弁によっては再質問します。

答弁:高橋市長

次に,東海第二原発に関する御質問にお答えいたします。

はじめに,防潮堤の施工不良に対する私の見解についてお答えいたします。

日本原電は,本年10月に,「防潮堤工事のうち,取水口周辺の防護壁において,コンクリートの未充填や鉄筋の変形があったこと」,そして「当該施工不良を把握したのは,6月であったこと」を明らかにいたしました。

本市へ説明があったのも10月13日であり,発覚後4か月経過しての報告であったことから,日本原電に報告が遅れた理由について問いただしたところ,「原因を慎重に調査しており,調査結果の整理に時間を要したため」とのことでございました。

今回の事案は,完成前の工事に関することであることから,日本原電と水戸市が締結している安全協定に報告義務の定めはなく,協定に違反するものではございません。

しかしながら,私は,発電所の安全対策工事は多くの市民が注目しており,市民に不安を与えかねない事案が発生した場合は,速やかに私ども自治体に報告して当然だと認識しております。

そのため,先月開催いたしました「東海第二発電所安全対策首長会議」において,今回の報告の遅れは信頼関係を損なうものであり,今後,同様の事案が発生した際には速やかに報告するよう,私から日本原電に対し厳重に注意したところでございます。

次に,拡散シミュレーションに関する御質問にお答えいたします。

この度,茨城県から示されました拡散シミュレーションの結果を見ますと,水戸市におきましては,北東部の一部の地域が「即時避難の必要まではないが,無用な被ばくを避けるために1週間程度以内に地域を離れなければならない地域」,いわゆる「一時移転の対象地域」に該当するという結果であり,その際の水戸市民の最大避難者数は約5万9千人と試算されているところでございます。

ただし,茨城県からは,この結果については,地域全体のリスクを把握することを目的としたものであり,各自治体の個別のリスクを示したものではないとも聞いてございます。

具体的に申し上げれば,今回,シミュレーションの条件の一つとして2020年度における実際の気象条件を使用しておりますが,採用する気象年度を変更すれば,地域全体の結果としては大きく変わることはなくとも,水戸市のみの結果で見れば,避難者数の増減はあり得ると伺っているところです。

そのため,今回の結果については,限られた条件における一つの検証と捉えており,一時移転の対象地域が本市の一部地域だけであるからといって,私は,「その地域だけの避難先を確保すれば良い,その地域の避難計画だけを策定すれば良い」とは全く考えておりません。

これまでどおり,市内の全域が一時移転を行う可能性があるという認識のもと,全市民の避難先をしっかりと確保し,市内全地域の避難計画を策定してまいります。

また,今回の結果により,「UPZ内の92万人全員が一斉に避難するのではなく,事故の状況やその時の風向きによって限定された区域が避難対象となること」が示されたと考えており,地域全体の避難の規模感を表す上で,今回のシミュレーションは大きな意義があったと考えております。茨城県においては,追加の検証も行いながら,この結果をもとに,具体的な活用策について,私ども避難元自治体と協議をしていくとのことでございますので,資機材や人員体制の整備方針への反映も含めた有効活用策について,県としっかりと連携し検討してまいります。

東海第二発電所の再稼働につきましては,施設の万全の安全対策が完了していることはもちろんのこと,実効性のある広域避難計画が策定できない限りはあり得ないものと考えております。あわせて,私は市民の皆様の安全で安心できる暮らしを守っていくという使命がありますので,引き続き議会の御意見を踏まえるとともに,水戸市原子力防災対策会議における技術的,専門的な御意見や多くの市民の声を十分考慮しながら,最終的な判断を下してまいります。