3.    開発行政について

(1)  京成百貨店の不正と上空通路建設について 

次に、新市民会館問題です。

水戸市は、新市民会館、水戸芸術館、京成百貨店の3施設が「トリオ=三重奏」だとして、周辺エリアの愛称を「ミトリオ」としました。

その一角、京成百貨店が、雇用調整助成金を不正受給したことが、全国ニュースでも報道され、激震が走りました。

不正受給額は3億円余りにのぼり、労働局はペナルティを含む、約13億4400万円の返還を命じる処分を発表しました。これは、全国一高額な返還命令です。

京成百貨店は、3月1日に、取締役3人が辞任し、全額を返還しましたが、7日には茨城県警が、詐欺の疑いで家宅捜索するという衝撃のニュースが続いています。

3月8日の報道では、「県都シンボル強制捜査」「雇調金不正で詐欺容疑」などの見出しが躍っています。

これではイメージアップどころか、「不正と利権のミトリオ」と呼ばれても仕方ない状況ではないでしょうか。

この問題について、市長はどうお考えか、所見を伺います。

問題はそれだけではありません。

いま、市民の批判の声が高まっているのが、京成百貨店と新市民会館を結ぶ上空通路の建設です。

市は、2月10日の新市民会館特別委員会で、上空通路の工事費を「5億4000万円から6億2700万円へ、8700万円、増額する」と説明しました。

パネル② これが上空通路の図ですが、工事費増額の場所はいずれも京成百貨店側にあります。

理由の第一は、京成百貨店側の上空通路の支柱を立てる場所に、鋼材や矢板が残っており、撤去費用が追加されること。

第二に、京成百貨店と上空通路の接続部の工事が、当初より高くなること。そして客の出入り確保のために、吊り足場に変更するというのです。

つまり、どれもこれも、京成側の事情による増額です。

そもそも、京成の要望からスタートした上空通路計画ですが、当初、百貨店本体が建築基準法上の既存不適格建築物となるため、法適合のために約18億円の工事が必要となりました。

京成が、その費用を捻出できないとして、2016年(平成28年)に頓挫していました。

ところが2020年4月(令和2年4月10日)、一転して「京成の改修工事は必要ない。全額税金で建設する」と変更したものです。

つまり、市から建設を持ちかけたわけですが、すでに、地下連絡通路があり、地上でも横断歩道を渡れば、すぐです。

私は、特別委員会で「元々必要がない通路であり、京成の事情による増額などあり得ない。不正受給問題の渦中にある京成百貨店のための、通路建設は中止を」と求めたところです。

今からでも中止すべきではありませんか。答弁ねがいます。

(2)新市民会館をめぐる住民訴訟について

3月2日、新市民会館をめぐる住民訴訟の、第13回口頭弁論が水戸地裁で開かれました。

この日は、市側の証人3人が出廷し、1日かけて証人尋問が行われ、私も傍聴しました。

そこで明らかになったことは、第一に、新市民会館の立地や規模の決定過程が不透明であることです。

平成25年当時の、市内部の会議の議事録によると、「3000人規模だと大きすぎる。2000人規模がちょうどいい。北関東では、コンベンションの需要がない」という発言ばかり。

にもかかわらず、わずか数か月後に、巨大施設の計画に変貌した理由と経過を問われた証人は「会議ではないところで決まったので文書はない」と証言し、

原告弁護団が「大事な事は記録のないところで決まるのか」と、厳しく指摘する一幕もありました。

第二に、立地場所は泉町1丁目ありきだったことです。

5つの候補地で、一番高い場所を選びながら「最少経費原則に反してない」と言いつつ、「立地場所の検討段階では事業費が決まっていなかった」と証言するなど、

結局、いくらかかろうと泉町一択で、最初からコスト意識が無かったことが浮き彫りになりました。

第三に、地区内住民を押い出して、建設を強行したことです。

なぜ再開発事業にしたかを聞かれれば「権利者が残れるやり方を選んだ」と言った直後に、「市が全部買い取るつもりで交渉した。権利床を持つ地権者に市が家賃を払うなど想定外だった」と、矛盾に満ちた証言もありました。

同意を強要された商店主が、泣く泣く出ていかざるを得なかった無念な思いも法廷で示され、住民犠牲のうえに建設が強行された、リアルな実態も明らかとなりました。

第四に、「渋滞問題は一切検討していない。行きの渋滞がいやなら早く来るように、帰りの渋滞がいやなら遠くの駐車場に止めるように、アナウンスする」というだけで、「あまりに利用者目線とかけ離れている」と怒りの声が上がりました。

極めつけは、重要な決定への市長の関与についてただした場面です。

令和元年8月29日の「新市民会館周辺にぎわい推進協議会」で、当時の部長が「新市民会館はいくつか候補地があった中で、市長の強い思いにより、泉町という場所に決定した」と発言しています。

原告弁護団が「市長の強い意向で泉町に決めたのではないか」と迫ったのに対し、証人は「誤解をまねく発言だった。そういうことはない」と弁明しましたが、説得力がありません。

このように、裁判を通じて、問題点が次々に浮き彫りとなっており、地方自治法が定める最少経費原則に違反し、市長の裁量権の逸脱乱用があったことは明らかです。

最終陳述が4月27日、判決日は6月15日と決まりました。裁判もいよいよ大詰めです。

そこで、これら新市民会館をめぐる多くの問題点について、市長はどう捉えているのか、重要な決定に対する自らの関与についても、明らかにするよう求めるものです。

(2)  市街地再開発について

①     水戸駅前三の丸地区再開発について

水戸市の開発優先は新市民会館にとどまりません。

次は、水戸駅前三の丸地区・リビン跡地のマンション開発に、39億円もの補助を行う方針で、来年度は2億6000万円が予算化されています。

つくるのは、またもやマンション(18階建て186戸)、ホテル(11階建)に、テナントビルです。

建設するのは、長谷工と、フージャースコーポレーション。

長谷工工務店は、資本金575億円、東京都・港区本社のゼネコン。フージャースコーポレーションは、資本金50億円、千代田区が本社の、全国展開する不動産会社です。

市民や中小業者の苦境をそっちのけにして、資金力のある大企業を多額の税金で補助している場合でしょうか。

 

②     泉町2丁目・中央ビル街区再開発について

さらに、新市民会館の西側、伊勢甚所有の「中央ビル街区の再開発計画」が着々と進んでいることが明らかとなりました。

地上13階・地下1階、こちらもマンションと店舗、オフィスビルを建設する計画です。

パネル③これがその完成予想図です。向かい側の新市民会館まで書き込まれています。

問題は、対象区域内の建物の9割を占める中央ビルを、多額の税金補助で建て替える計画だということです。

これまで市は、一体、どれだけの税金を泉町に、そして伊勢甚に、投じてきたでしょうか。

泉町南地区では、68億円の税金を補助して、京成百貨店が建設されましたが、伊勢甚は今もその土地の所有者の一人です。

南地区開発の後、北地区の旧京成デパートを取得しました。

新市民会館建設では、その旧京成デパートの転出名目の補償金と、解体費をあわせて、約40億円もの利益を得たうえに、新市民会館の1階に7000万円相当の床、40坪のスペースまで手にいれたのです。

そして、今度は中央ビルで、巨額の補助を受けるとなれば「一体どこまで税金を食い物にすれば気が済むのか。

「いい加減にしてほしい」と、怒りの声が広がるのも当然です。

伊勢甚にとって「3度美味しい再開発」、「税金が泉のように湧いてくる再開発」、そう言っても過言ではありません。まさに「伊勢甚の、伊勢甚による、伊勢甚のための再開発」です。

市長は、この中央ビルの再開発にまで税金で補助するつもりでしょうか、お答えください。

水戸市の過去の再開発事業はどうなったでしょうか。

大工町や赤塚駅前もテナントが埋まらない一方で、市内の空き家は増え続け、マンションは供給過剰です。

来年度末の市債残高の見込は、約2460億円。

今後、新市民会館など、4大プロジェクトの借金返済が始まれば、公債費が増大し、5年後(令和10年度)には、年112億円もの借金返済となる見通しです。

にもかかわらず、再開発にさらに多額の補助を行えば、他の予算をますます圧迫することになってしまいます。

失敗続きの再開発を推進する一方で、古い学校の改修や、市営住宅の改築は先送りでは、明らかに優先順位を間違えています。

特定企業優遇の再開発に、多額の税金をつぎ込むのをやめて、市民の暮らし、福祉や教育の予算に回すべきと考えますがいかがか、答弁願います。

答弁:市長

次に,新市民会館建設について,お答えいたします。

京成百貨店における雇用調整助成金の不正受給につきましては,市民の信頼を裏切る行為であり,誠に遺憾であります。本市といたしましては,捜査の推移を見守り,厳正に対処していきたいと考えております。

一方で,京成百貨店においては,県内唯一の百貨店として,中心市街地の活性化や良質な消費活動を支えるとの責任意識を持ち,再発防止策を徹底し,早期に消費者の信頼回復へ向け,全力で取り組んでいただきたいと考えております。

また,本市といたしましては,水戸市民会館,水戸芸術館,京成百貨店の三つの施設からなる「MitoriO(ミトリオ)地区」が,中心市街地のみならず本市の全域をリードする存在となることを目指しております。その一翼を担う重要な拠点として,京成百貨店には,しっかりと役割を果たしてほしいと願っております。

そのうえで,三つの施設の連携を更に強化し,にぎわいの創出や,交流人口の増加を図り,まちの活性化と魅力あふれるまちの実現を目指してまいります。

次に,京成百貨店と市民会館を結ぶ上空通路についてお答えいたします。

泉町1丁目の上空通路整備事業につきましては,市民会館をはじめ,水戸芸術館を含む北側のエリアと,国道50号を挟んで南側の京成百貨店とを結び,これらMitoriO地区の一体化及び市民の安全性,利便性の向上を図り,地域の活性化にも資する重要な事業であります。

市民会館のオープンに合わせた供用開始を目指し,現在,国の直轄事業として,工事が順調に進められているところであり,引き続き,国・県との緊密な連携のもと事業の進捗を図ってまいります。

次に,住民訴訟について,お答えいたします。

市民会館整備につきましては,市民や芸術文化団体の練習,発表等の活動の場として,年間30万人に利用されていた旧市民会館が東日本大震災によって被災し,使用ができなくなったことから移転建替えを選択し,事業を進めたところであります。

移転建替えの検討を進めるに当たっては,整備の基本方針を整理し,県都にふさわしい芸術文化及びコンベンションの拠点というコンセプトを実現するための施設の機能や規模,立地場所などを,さまざまな観点から検討し,決定したものであり,地方自治法,地方財政法の趣旨に沿ったものであると認識しております。

また,人を呼び込み,交流人口を増加させるという市民会館の特性が,本市の活力を高め,発展させていく上で,にぎわいの創出に非常に効果的であるとともに,中心市街地の商業施設等との連携も図りやすく,経済波及効果も最大限に期待できると考えております。

私は,多様化する社会の中で,芸術文化は人々の心を豊かにし,感動や活力を生み出すものと認識しており,市民の誰もが芸術文化を身近に親しめる施設として,市民会館の必要性がますます高まっていくものと考えております。

本年7月2日のオープンに向けて,交通対策等を含めて,万全の準備を進め,多くの市民に感動や希望を与えられる施設づくりを実現し,まちのブランドイメージを高めてまいります。

次に,市街地再開発事業についてお答えいたします。

水戸駅前三の丸地区市街地再開発事業につきましては,県都水戸市の玄関口である水戸駅北口の顔としてふさわしい街づくりを目指すとともに,定住人口の増加や経済への効果も発揮でき,本市のイメージアップにつながるよう早期完成を目指し支援しているところであります。

このため,本市としましては,平成28年に市街地再開発事業の都市計画決定を行うとともに,国費を獲得し議会から予算をお認めいただきながら再開発組合を支援してまいりました。

本年2月2日に再開発組合では,権利変換計画の県知事認可をいただいたところであり,令和5年度の建物解体工事,令和6年度の施設建築工事着工を予定し,令和8年度の完了を目指しているとのことです。

次に,泉町2丁目の中央ビルを含む街区につきましては,ご質問を受けて確認しましたところ,令和4年7月頃から地元の権利者によりまちづくりのための勉強会が行われているとのことであり,内容等についての詳細は承知しておりません。いずれにいたしましても,再開発事業等については,公共公益性やまちなか活性化に資することはもとより,莫大な予算を必要としますので,行政運営上慎重な判断が必要であると考えております。

<田中議員の再質問>

それぞれ答弁いただきましたが、中央ビルの再開発について再質問します。

私どもが入手した、中央ビル再開発の勉強会の資料では、昨年7月からほぼ毎月5回、すべて都市環境研究所というコンサルタント会社が報告しています。この会社は、本社は東京(文京区)ですが、水戸の事務所は、中央ビルの泉町1丁目再開発組合と一緒です。

かつて、京成百貨店の再開発でも、コンサルタント業務を行い、市民会館建設でも、水戸市が移転補償費の算定などを委託しており、市もよく知った間柄と思いますが、「全く承知していない」ということでいいのか疑問です。

勉強会では、今月中に準備組合を設立し、市に計画を提案し、基本計画の策定や、都市計画決定をへて6年後に完成させるとして「水戸市等の行政から特段の支援を得て行う」と明記されています。

静岡で、20億円の補助を受けた例まで、示しています。

すでにゴーサインがでているのかと思うほど、具体的で急ピッチです。ちょうど総合計画見直しのタイミングですが、7水総にもりこむようなことになったら大変だと考えます。

私は、あまりにも特定企業優遇であり、マンション・テナントも供給過剰、市の財政負担と他の事業へのしわよせを考えれば「中央ビル再開発には補助できません」とハッキリ言うべきと考えますが、いかがか。

再度、答弁を求めて、質問を終わります。