2.教育行政 

(1)  支援を必要とする児童生徒へのサポートについて

次に、教育行政について、質問いたします。子どもたちの声に耳を傾ける、これは教育現場でも求められています。

個々の児童生徒の状況に応じた合理的配慮、きめ細かな対応が求められており、私は、読み書きが苦手な学習障害や、発達障害をもつ児童生徒に対して、中学校における通級教室の増設などを求めてきましたが、来年度の計画を伺います。

本来、障害をもつ児童生徒に対して、学校関係者の共通理解のもとに指導・支援が行えるように、「個別の教育支援計画」を作成し、活用することが大切です。

ところが、「現場では引継ぎが十分でなく、必要な支援が行き届いていない」との声や、「ガイドブックやリーフレットもあるものの、すべての教員や保護者に知られていない」との声が寄せられています。

特に、普通学級に在籍する、支援が必要な児童生徒への対応が十分なされておらず、不登校児童生徒を増加させる一因、とも指摘されています。

そこで、支援計画の対応の改善について、所見を伺います。

(2)  不登校支援の拡充について

水戸市の昨年度(令和4年度)の不登校児童生徒数は,小学校228人,中学校392人,合計620人と過去最多です。

これは一つの小中学校に匹敵する規模です。

つくば市では、来年度、不登校支援を拡充するために、すべての小中学校で校内フリースクールを設置することを発表しています。

水戸市でも、校内フリースクールを設置する方針が示されましたが、どのような規模と内容なのか、受け入れ条件や体制などについても伺います。

国は、全都道府県での「不登校特例校」の設置を推進し、支援する予算も組んでいます。

不登校特例校とは、通常の学校とは異なる独自のカリキュラムが組むことができるもので、設置準備委員会の設立や、住民ニーズ調査・説明会の実施、プレイルームに必要な備品などの経費についても、国が支援するものです。

今年度、特例校として夜間中学を開設して注目されている香川県三豊市(みとよし)のほか、世田谷区、神奈川県大和市など、公立の不登校特例校を設置する自治体が増えています。

水戸市と同じ中核市の八王子市では、19年前(平成16年4月)から、不登校児童生徒のための、公立の小中一貫校を開き、多様な学びの場が、子どもたちの居場所として歓迎されています。

茨城県内で、最も不登校児童生徒が多いのが、この水戸市です。不登校特例校の具体化を検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。

答弁:教育長

田中議員の代表質問のうち,支援を必要とする児童,生徒へのサポートについてお答えいたします。

国においては,新しい時代の特別支援教育の在り方について多様な学びの場の一層の充実が必要であるとしており,教育的ニーズに的確に応える指導を提供できる,多様で柔軟な仕組みを整備することは大変重要であると認識しております。

本市では,特別支援学級だけではなく,言語障害,情緒障害,学習障害など,個人の特性に応じた対応をするため,通級指導教室を設置し,支援を行っております。令和2年度には笠原小学校に心の安定を図るための情緒障害通級指導教室を,令和3年度には浜田小学校に発達性読み書き障害を含む学習障害や,不注意や落ち着きのなさ,衝動性などが見られる注意欠如・多動症への支援としてLD/ADHD通級指導教室を開設いたしました。令和4年5月1日現在,言語障害通級指導教室を小学校2校,情緒障害通級指導教室を小学校3校,中学校1校,LD/ADHD通級指導教室を小学校

1校に設置しており,合計110名の児童生徒が通級しているところでございます。

現在,通級指導教室を利用している児童の中には,中学校進学の際,引き続き利用を希望する児童や保護者がいること,また,現在通級指導教室を利用していない場合であっても,中学校進学を機に利用の希望もあることから,本市では,多様な学びの場を充実させる観点からも,新たに中学校におけるLD/ADHD通級指導教室を第三中学校に,情緒障害通級指導教室を笠原中学校に,それぞれ県に教員の加配を要望し,新年度の開設に向けた準備を進めているところでございます。

次に,個別の教育支援計画の活用状況についてでございます。個別の教育支援計画とは,障害者基本計画に示される個別の支援計画のうち,教育機関が中心となって作成し,関係機関との連携により就学前教育から高等学校等卒業までの切れ目のない支援を行うため,支援の目標や内容等を盛り込んだ計画のことでございます。各学校においては,特別支援学級に在籍している児童生徒,通級指導教室に通級している児童生徒,通常の学級に在籍している児童生徒のうち特別な支援が必要な児童生徒を対象に作成しております。しかしながら,作成した教育支援計画をもとに児童生徒への効果的な支援が行われていない事例や,進級や進学の際に十分な引継ぎが行われなかった事例がございました。現在,教育支援計画の内容の充実を図り,より活用しやすくするために,計画書の記載内容の見直し等を行っております。今後は,学校間における格差をなくし,より一層,有効な活用ができるよう,個別の教育支援計画をもとに

一人一人の状況に応じた丁寧な引継ぎを行い,就学前教育から高等学校等卒業までの切れ目のない支援を進め,学びの連続性を大切にしてまいります。

次に,不登校支援の拡充についてお答えいたします。

不登校児童生徒への対応につきましては,本市では単に「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を自分事と捉えて,社会的に自立することを目指すという考え方に基づき,不登校児童生徒一人一人に寄り添いながら,個別の状況に応じた支援を行っております。

各学校においては,教室への登校が難しい児童生徒に対して,保健室や相談室などの教室以外の別室への登校や放課後に登校ができる場を提供し,学校での居場所づくりを積極的に行っております。

さらに,来年度は千波中学校において,校内フリースクールの設置に向けた準備を進めているところでございます。校内フリースクールとは,校内に不登校生徒が安心して生活できる専用の教室を確保し,担当の教員を配置して,一人一人の学習計画に応じた支援を行う取組でございます。設置に向けては,校内フリースクールを中心に担当できる教員の加配を県に要望しているところでございます。また,校内フリースクールには担当の教員だけではなく,教科や学年を問わず,さまざまな教員が関わりながら不登校生徒の支援を行ってまいります。校内フリースクールにおける学習については,作品の制作や,音楽鑑賞等を行う実技教科の学習,ICTを活用した自主学習,在籍学級の授業を視聴するオンライン学習など,多様な学習形態を選択できるよう進めてまいります。今後は,他市町村での先進事例を調査するとともに,千波中学校での取組を検証し,不登校児童生徒のより良い支援について検討してまいります。

次に,議員ご指摘の不登校特例校につきましては,不登校児童生徒の実態に配慮し,人との関わりを大切にするコミュニケーションの時間を設けるなどの,特別の教育課程を編成できる特例校として,令和4年4月現在,全国に公立の小中学校として12校設置されています。不登校特例校では,個々の児童生徒の実態に即した柔軟な指導・支援が行われる一方で,それに伴う必要な教職員定数や支援スタッフの確保等の指導体制の充実を図る必要があるため,今後,先進的な取組を行っている自治体についてその成果や問題点等について引き続き調査し,研究してまいります。

今後におきましても,すべての児童生徒が安心して通える学校づくりを進めるとともに,一人一人の状況に応じたきめ細やかな支援に努めてまいります。