次に、東海第2原発の避難計画と廃炉についておたずねします。

今、水戸市民にとって、命と暮らしをおびやかす最大の脅威は、新型コロナウイルスの蔓延と、原発の再稼働です。

新型コロナが、次々と形を変えて人類におそいかかってくる以上、もはや災害のスタンダードとして対応しなければなりません。

であれば、原発と感染症の複合災害は、避けて通れない課題とすべきではないでしょうか。

では、水戸市の避難計画はどうでしょう。

市長はこれまで「全市民27万人の避難先を確保した」と答弁してきました。

その根拠は「平成30年12月をもって、40自治体に及ぶすべての避難先自治体との協定締結を完了した」というものでした。

しかし、その実態は、避難者1人あたりの面積は2平米、タタミ1畳分。狭い避難所に無理やり市民を押し込めて、やっと成立するものです。

このパネルをごらんくさだい。これは、江尻かな県議が県議会でしめした避難所の想定図です。

1人あたり2㎡が、いかに非人間的で、家畜のような扱いかがよくわかると思います。

この基準をごり押しした大井川知事は、家族をディズニーランドのすぐ近くに住まわせ、避難所生活をさせるわけではありません。

また、「この基準でやれ」と職員に策定を命じたのは高橋市長です。

ところが、この計画そのものの避難スペースは、本来利用できない廊下や倉庫、トイレまで含めて策定したもので、そのズサンさとともに、これを是正しただけでも県全体で1万8千人分もの避難所が足りなくなることが判明しました。

県自体もそれを認め、避難先自治体の実態調査をはじめました。

そこでお尋ねします。

水戸市の避難先である40の自治体は、なんと回答してきたのでしょうか。

避難先のひとつ、千葉県松戸市は、当初は約1万6000人を受け入れるとしていましたが、さすがに1人1畳分・2㎡ではコロナ対策にはならないと、1人あたり2倍の4㎡に増やしました。

結果的に「受け入れ人数は半分の約7000人に減らす」と回答してきました。

避難先40自治体が、松戸市と同じコロナ対応をとれば、市長が「全市民27万人の避難先を確保した」と豪語しても、その半分にも満たないわけです。

これでは、今の県や水戸市の基準では、避難した水戸市民の命も暮らしも守れないことは明らかです。

ましてやこのスペースで、男女の区別もなく閉じ込められる市民の身にもなって頂きたい。市長は、家族をそんな目に合わせる覚悟があるのでしょうか。

実効性ある避難計画など、もはや実現不可能、子どものお絵かきにも劣るものです。

そもそも、避難計画策定の責任は、事故を起こす原電が、加害者として恐る恐る自治体・住民に提出すべきもので、なぜ被害者となる水戸市がつくらなければならないのでしょうか。それどころか、茨城県は一人当たりの面積を増やすと、避難先が遠方になることから、「移動の負担軽減を考慮した」と、広報紙をつかって宣伝しています。

負担軽減をそれほど配慮するのなら、昔の監獄のような負担をなぜさせるのか。

なぜ「再稼働は認めない」と言わないのか。

原電は避難計画づくりに「協力する」と表明していますが、市長は「現段階で協力を得ている事項は特にない」と答弁しています。一体何を協力し、協力させるというのでしょうか。

すでに国・内閣府は2016年、「避難所運営ガイドライン」を作成し、その冒頭にこう書いてあります。

「避難所生活の『質の向上』は「贅沢ではないか」という指摘を受けることもあります。

しかし「人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送ることができているか」という「質」を問うものであり、個人の収入や財産をもとに算出される生活水準とは全く異なる考え方であるため、「贅沢」という批判は当たらない」と述べています。

そして「スフィア基準」を参考に、市町村が避難所の質を向上させるよう求めています。スフィア基準とは、国際人権法や難民法などを根拠に、1998年に定められたもので、災害被災地での避難所運営など、支援を行うすべての機関が守るべき、国際的な最低基準です。

具体的には「被災者が安定した状況で、尊厳をもって生存し、回復するためにあるべき人道対応を行う」ことが必要だと明確に規定しています。

「居住スペースは、睡眠、調理、食事、洗濯、身支度、食料の保管や貯水、家庭の所持品や財産を守るうえで適切でなければならない」「過度の混雑にさらされることは、感染症の発生や不健康のリスクを高める事にもなり得る。」「狭小なスペースは安全やプライバシーを低下させる」としています。

水戸市は、これら当然な基準を破ってまで、県の基準に従うというつもりなのでしょうか。

ご承知のように3月18日、水戸地裁は、日本原電に対して、東海第二原発の運転さしとめ判決を言い渡しました。

判決は、東海第二原発が重大事故を起こし、全面緊急事態となった際に、実現可能な避難計画や、その実行体制が整えられておらず、人格権侵害の危険があるとしたものです。

水戸市はこの判決を尊重し、ただちに廃炉を求めるべきです。廃炉といえば、日本初の商業用原発である東海発電所は、1966年の運転開始から32年、1998年に運転停止しました。その後、核燃料とりだしに3年、廃炉作業開始から20年。

しかし、いまだに放射線量の高い原子炉本体は手付かずのまま、高レベル放射性廃棄物をどこへ運び出すかも決まらず、廃炉がいつ終わるかさえ不明です。

出力16.6万キロワットの小さな東海発電所でも、これだけ時間がかかるのです。ましてその7倍、110万キロワットもある東海第二の廃炉に、いますぐ取り組んだとしても、孫子の代まで負担を押し付けることになります。

再稼働はやめさせて、廃炉の決断を求めるべきですがいかがか、明快な答弁を求めます。

以上で第1回の質問を終わります。

答弁によりましては、再質問いたします。

答弁:市民協働部長

田中議員の一般質問のうち,東海第二原発の広域避難計画に係る御質問についてお答えいたします。

本年の1月から2月にかけて,「水戸市を含め,東海第二発電所のUPZ圏が避難を予定しております県内自治体の避難所のうち,いくつかの避難所において,避難スペースとしては適さない,通路やトイレなどの面積を受け入れ可能人数の算定に含めている」との報道がなされました。この報道を受け,茨城県においては,県が主体となって県内避難所の図面調査等を開始したところでございます。

また,本市の31の県外避難先自治体については,茨城県との協議のもと,水戸市において確認作業を行うこととなり,本年4月

16日付で「再調査のお願いの文書」を送付いたしました。そして,その後,6月中旬には,茨城県において,県外避難先の自治体についても図面調査を開始したところでございます。これらの一連の再調査に関しましては,いずれも水戸市と茨城県において,緊密に連携を図りながら進めているものであり,引き続き情報の共有を図りながら結果を取りまとめるとともに,今後の対応について協議してまいります。

また,新型コロナウイルスの感染症対策を踏まえた,避難所運営等について,国や県,周辺自治体と連携を図りながら,検討を進めているところでございます。今後とも協議を重ねながら,原子力災害の防護措置と感染防止対策を,しっかりと両立させてまいります。

東海第二発電所の再稼働につきましては,全ての市民の安全な避難に向けた実効性のある広域避難計画の策定はもちろんのこと,市民理解が得られない限りは,認められないと考えております。本市といたしましては,引き続き,議会の御意見を踏まえるとともに,水戸市原子力防災対策会議における技術的,専門的な御意見や多くの市民の声を十分考慮しながら,判断をしてまいります。