<font color=”#FF0000″>〈中庭議員質問〉</font>
水戸市は水戸市立図書館協議会に対し図書館に指定管理者制度を導入して民間委託することについて、8月6日に諮問しました。
12月までに答申をもらい、その後は内部協議の上、議会に指定管理者制度導入の条例提案をおこなうとしています。
水戸市が民間委託を検討する理由に①行政評価委員が民間委託の検討をすすめる意見がだされたこと②行政改革推進本部における指定管理者制度の導入の検討をすすめる方針がだされたことをあげています。
そこで私は、市のホームページで公開されている行政評価委員会の議事録を調べましたところ、昨年8月9日に平成24年度第2回水戸市行政評価委員会が開かれ、5人の行政評価委員が出席し、その中で特に一人の委員から民間委託を強調されました。
そこで6点について質問いたします。
第1は民間委託に対する当初の考えは変えたのか。
昨年8月9日の行政評価委員会で、民間委託の意見がだされました時、出席していた水戸市の執行部は、
①コスト削減だけでみてはならない。図書館は社会教育機関であり、水戸市の将来の人材をそだてる先行投資である。
②民間委託になったら図書館の経験の蓄積が困難になり、チープなレンタルブックショップになってしまうこと。
③市民の立場にたった蔵書、資料収集が続けられるか疑問である。民間委託を受託会社の手っ取り早い利益となるのは、出版社の在庫処分といったセットものの納入などもあり、民間委託を受託した会社が、売れ残りの図書を図書館に買わせることがあるとのべています。
この答弁をみるとこの時点までは、市が民間委託に否定的な問題意識をもっていたことはあきらかであります。
水戸市は今回これらの問題意識を捨てて、民間委託を推進する方向になぜ変わったのか、今回の諮問にあたって市民の声は聞かなかったのかについて答弁をもとめます。
第2は図書館を民間委託した市区町村はきわめて少数であることであります。茨城県内で潮来市のみでありますが見解をもとめます。
逆に民間委託から、直営にもどしたところも全国では島根県安来市立図書館、香川県善通寺市立図書館など7館あります。
第3は民間委託になると図書館行政が営利の対象となり、経費削減が優先され、郷土資料の収集などがおろそかになってしまうことであります。
第4に5年ごとに委託業者をきめる公募が行われるため、図書館業務のノウハウ、専門性が継続されないことであります。
第5にこの4月から民間委託となった九州の佐賀県武雄市の図書館では大手のブックストアーのツタヤの系列会社のCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が受託しましたが、本の販売や喫茶店の設置など営利事業の場となってしまうことが武雄市議会でも問題になりました。
また図書利用カードがCCCのTカードになり、貸出履歴の個人情報が委託業者に提供され、日本図書館協会も「利用者の秘密を守ることを約束している公共図書館の立場から肯定しがたい」との見解を示しているほどです。
第6に、図書館で働く労働条件が悪化することであります。現在でも図書館職員77名中、正職員は27名、臨時、嘱託職員は50名であり65%が臨時職員であり、経費削減の名のもとに、さらに安い臨時職員がふやされ、図書館司書の専門性が失われ、引いては市民サービスの低下につながります。直営を維持すべきであります。
以上6点について明快な答弁をもとめます。

<font color=”#3333CC”>〈市長答弁〉</font>
中庭議員の代表質問のうち,図書館行政についてお答えします。
はじめに,民間委託を推進する方向に変わったのかとの御指摘でございますが,本市行財政改革プラン2007以来,図書館は,民間活力活用の検討を図る施設として位置付けられ,平成24年度の行政評価では,第三者機関である行政評価委員会から「民間委託についての検討を進めるべきである。」という意見が出されていることなどから,市民サービスの維持・向上及び効率的な運営に向け,指定管理者制度の導入の検討を進めるよう,行政改革推進本部による評価を受けております。
図書館では,昨年度,内部にワーキンググループを設置し,先進
都市の視察や状況調査をはじめ,他市事例に見られる制度活用による有効性についての調査を進めてまいりました。図書館法第14条第2項の規定に基づき,図書館長から,図書館行政に造詣の深い図書館協議会の委員に対し諮問をし,図書館サービスの向上に向け,行政評価委員会において挙げられた課題への対応も含め,指定管理者制度導入の検討を進めていただいているところでございます。
次に,民間委託の状況ですが,県内では潮来市に続き,来年度,筑西市での指定管理者制度の導入が予定されている他,牛久市では一部業務委託が導入されております。また,指定管理者制度導入に向け,検討を進めている県内自治体も他に9市町ございます。合わせて県内,他の11市町村が導入または検討を行っている状況でございます。なお,日本図書館協会の調査によりますと,平成24年度末現在,全国で156市区町村において333の図書館に導入されており,平成23年度末と比較いたしますと,12市区町村,37図書館において新たに導入されております。
次に,民間委託により,郷土資料等の収集がおろそかになるのではないかとの御質問でありますが,図書館法第3条には,図書館の役割として,郷土資料,行政資料や図書,記録などの図書館資料を収集し,一般公衆の利用に供することと規定されていることから,
指定管理者制度の導入如何にかかわらず,図書館が実施しなければ
ならない業務であり,しっかりと管理してまいります。
次に,図書館業務のノウハウや専門性が継続されないのではないかとの御質問ですが,図書館法第3条に,図書館の職員が図書館資料について十分な知識を持ち,その利用のための相談に応ずるようにすることと規定されております。指定管理者制度を導入した場合においても,本市図書館の特色を生かした運営方法や職員の専門性の継続の有り様について,図書館協議会において,御協議いただいてまいります。
次に,図書利用カードをTカードに切り替えることにより,個人情報が委託業者に提供されるのではないかとの御質問ですが,全国的に,指定管理者制度を導入した多くの自治体では,導入以前の利用カードを継続して使用しております。しかしながら,個人情報の保護の問題につきましては,重く受け止め十分な対応に努めてまいります。
次に,経費削減の名のもとに臨時職員等が増やされ,労働条件が悪化する結果,市民サービスの低下につながるのではないかとの御質問ですが,他市の導入事例によりますと,指定管理事業者においては,臨時職員から正社員に採用されるなど,安定した雇用が生まれている状況もございます。
次に,市民サービスの向上として,直営による予算増額で開館時
間の延長が可能ではないかとの御質問ですが,市民サービスの向上につきましては,開館時間の延長だけでなく,民間の新たな発想を生かした企画の実施や,需要に応じた柔軟な職員配置なども考えられることから,このような点も含め,図書館への指定管理者制度導入について,図書館協議会への諮問をはじめ,検討を進めているところですので御理解願います。