3.教育行政 就学前相談の改善について

次に、就学前相談の改善と充実について質問します。

就学前相談とは、小学校に上がる前の子どもの発達などに不安がある場合などに、心理検査や面談を行うものです。

その子にとってどういう環境でまなび、支援をうけることがいちばんよいかを見極める大切な機会であり、その子の将来にとっても、保護者にとっても、非常に大事なものです。

この就学前相談について、心理検査の結果の保護者への説明の改善や、心理検査をする側の専門性の向上などを求める声がよせられ、私も昨年5月、保護者といっしょに市長あてに要望書を提出したところです。

これまでの水戸市の対応では、行動観察や心理検査などの実施後、保護者との面談による説明が行われます。

その際、心理検査の結果については、詳しい分析内容を示した書面や説明がなく、数値とグラフが示された1枚の紙が渡されるだけでした。

これでは、専門家でない保護者が検査結果を読み解くことが難しく、こども発達支援センターや別の専門機関に問い合わせる保護者もいるとのことです。同様に、数値とグラフのみでは、担任をうけもつ教員も、その子の状態を十分理解できません。

そこで、心理検査の詳細な分析結果などを記載した報告書を保護者に渡し、きちんと時間を取って説明する機会をもうけ、教員とも情報共有をはかることです。

このように、これまで十分な説明がなされてこなかった背景には、検査する側の専門性の問題があります。

本来は大学院を卒業した発達心理士などの資格をもつ方が行うべき検査とされていますが、水戸市ではそういう体制がなく、専門資格を持たず、2日間の研修を受けたのみの検査員が実施しているとのことです。

この点について心理学博士で県臨床発達心理士会の支部長でもある大六一志・元筑波大学教授が水戸市に提言しています。

そのひとつめは、調査員の検査技能の確認を専門家が行うことです。他市では調査員の記録を大六先生がチェックし、ミスを指摘したうえで正しい結果に修正し、保護者に伝えるべきことや、子どもの支援計画に反映させることを指導しているとのことです。

ふたつ目は、水戸市の検査が最新のバージョンではなく、より正確な判定となるよう、最新の検査を活用した専門家による検査にしていくべきだということです。

実際に市内のある保護者が、市の検査結果に疑問をもち、別の専門機関で再検査したところ、30点高い数値が出た例もあったとのことで、保護者からは「子どもの人生を左右する検査なのだから、ミスがあってはならない。心理検査の資格のある人が検査をする体制にしてほしい」との切実な声もよせられています。

入学前相談は、夏休みに本格化するとのことで、すでに来年度の新1年生への案内がはじまっています。

県南の自治体では、心理士や言語聴覚士などの有資格者や、臨床発達心理士の資格をもつ教員が検査しています。

水戸市では年々相談者が増えているとのことですが、専門家による正確な検査の実施と保護者への適切なアドバイスで、子どもも保護者も希望をもって学校生活がスタートできるように、改善を図っていただきたいと考えますが、見解を伺います。

以上、明快な答弁を求めて質問とします。

<答弁>教育部長

田中議員の一般質問のうち,就学前相談の改善・充実についてお答えいたします。

本市におきましては,小学校に入学する前年度の夏から,発達等に不安があり,就学について相談したいと考えている保護者とその幼児を対象に,就学前相談を実施しております。

小学校入学に向けての就学前相談では,幼児に対して心理検査や行動観察等を行い,その結果を保護者面談においてしっかりと説明し,その子にとってどのような学びの場でどのような支援を受けることが最適なのかについて,保護者が十分納得した上で決定していくことが重要であると認識しております。

本市の就学前相談の現状でございますが,就学前相談の案内につきましては,例年5月と8月に市内各幼稚園・保育所等に送付するほか,広報みとやホームページを通じて周知し,昨年度は194件の相談に対応いたしました。

就学前相談当日は,保護者の面談とその幼児の心理検査や行動観察等を実施し,その結果をもとに,医師,大学教授,特別支援学校の教員等で組織する市教育支援委員会において慎重に審議を行い,一人一人の最適な学びの場などを決定します。

その後,保護者には,再度来所していただき,市教育支援委員会で決定した学びの場の提案や検査結果の説明などを行います。検査結果を渡す際,特性に応じた支援方法や入学後の合理的配慮の提案,また,特別支援学級等の見学や体験について情報提供を行い,必要に応じて面談を複数回行うなど,丁寧に対応し,就学先を決定していただいております。

さらに,今年度からは,新たに総合教育研究所に配置した公認心理師の専門性を生かし,心理検査の分析等を検査結果に記載するなど,保護者に分かりやすく伝えられるよう努めてまいります。

次に,心理検査の結果についてでございますが,検査結果はその子どもの最適な学びについて決定する際の重要な資料となりますことから,検査した本人だけではなく,特別支援教育専門員等,複数の目で点検しております。また,市教育支援委員会の前には,障害種別の4部門に分かれて専門部会を実施し,心理検査の結果を各部門で再度確認していただいております。さらに,今年度からは公認心理師を新たに配置したことから,より正確な心理検査が実施できるものと考えております。

今後も,保護者が子どもの最適な学びの場の決定ができるよう,就学前相談における心理検査の適切な実施やその結果の説明など,保護者に寄り添いながら,丁寧な対応に努めてまいります。