2019年12月議会 日本共産党水戸市議団 田中まさき議員の一般質問と答弁 2019.12.11
◆田中議員
日本共産党水戸市議団の田中まさきです。通告に従い一般質問を行います。
1. 教育行政 
(1)LD(学習障害)の児童生徒への支援について
はじめにLD・学習障害の児童・生徒に対する相談と支援の現状を伺います。
LD・学習障害とは発達障害のひとつで、発達性読み書き障害とも呼ばれています。基本的に知的発達に遅れがなく、言葉の理解も普通にできますが、文字が苦手で読み書きが困難なことが特徴とされています。
小学校で本格的に勉強がはじまると漢字の読み書きや計算が増えますが、たどたどしい読み方や飛ばし読み、逆さ文字や鏡文字、小さい「つ」を抜かして書くといった状況が中々克服できません。「やる気があるけれどついていけない」「再テストをくりかえす」など本人はつらい思いを抱えていますが、コミュニケーションには問題がない場合が多く、気づかれにくいといわれています。
先日、市内小学校に通う学習障害の子の保護者から様子を伺う機会がありました。文章は一文字一文字ゆっくり読み、すべての教科書にフリガナをふっていること。漢字や計算の宿題に時間がかかり、黒板に書かれた連絡事項がわからない場合があること。学校に行くことが不安で頭痛や体調不良になるなど、日々の苦労の大きさを知り、LDの子に合わせた支援の必要性を痛感しました。
また、相談機関や医療機関をいくつも訪れて発達検査や心理検査を行い、専門の医師の診察は3か月待ちなど、相談や診断に至る大変さもわかりました。
文科省は発達障害の児童生徒は30人学級に2~3人程度としており、本市では言語・情緒障害の支援学級はあるものの、支援内容の異なるLD向けの支援学級はなく、学習障害をもつ児童生徒数をはじめ実態が把握されておりません。
LDの子にとって、ひらがなやカタカナは50音なので何とかこなせても、漢字は視覚的に複雑で音読み・訓読みがあり数も多く、英語は同じスペルでも発音に違いがあるためより難しいのです。早い段階の支援がないと学習のつまづきが大きくなり、自信をなくし不登校につながる場合も多いといわれています。
そこで、小学校低学年の段階から支援できる仕組みづくりが必要と考えます。
保護者に対して迅速に相談機関を紹介すること、教員がすみやかに気づき配慮できるよう研修を充実すること、医師や大学教員、発達心理士、言語聴覚士など、LDに詳しい専門家と学校・教育委員会の連携を強めることも急務と考えますがどうか、見解を伺います。
国が通級指導の対象にLDを加えたのが13年前です。つくば市では4か所、日立市では5か所など、県内自治体の多くがLDむけの通級指導教室を設置していますが、本市にはいまだに一つもなく、遅れていると言わざるをえません。
LDの児童生徒向けのテキストやタブレット、パソコンをつかった読み上げソフトなど、専用の音声教材も活用し、マンツーマンで支援できる通級指導教室が必要です。ぜひ来年度から設置するよう求めますがいかがか、答弁願います。

◆答弁:教育部長‥LD(学習障害)の児童,生徒への支援について 
田中議員の一般質問のうち,LD(学習障害)の児童,生徒への支援についてお答えいたします。
LD(学習障害)とは,全般的な知的発達に遅れはないものの,聞く,話す,読む,書く,計算するなど特定の能力に困難があることを指すものであり,その発見が難しいという側面がありますが,早期に対応し,生活や学習が円滑に行えるよう,適切な指導や必要な支援を行うことは,大変重要であると考えております。
はじめに,相談及び支援の現状についてですが,本市では,各学校において,特別支援コーディネーターが,支援を必要とする児童生徒の保護者との相談や担任等への助言,医療機関や特別支援学校等の関係機関との連携などを行い,支援体制の充実に努めているところでございます。
また,特別支援コーディネーターを中心に,担任などがチームとなり,特別な支援を必要としている児童生徒の支援等について話し合う校内支援委員会を定期的に開催するとともに,一人一人の教育的ニーズを把握し,適切に対応していくため,保護者と相談の上,支援の方針や支援方法等を盛り込んだ「個別の教育支援計画」を作成し,実践しております。
さらに,特別支援学校の教員による巡回相談など,一人一人の状況に応じた支援を行っております。
次に,通級指導教室の設置についてですが,通級指導教室は,普段は通常の学級で学習している児童生徒に,ゲームや創作活動をとおして,コミュニケーション能力を身に付けさせるなど,障害の特性に応じた個別の指導を行う教室であります。
本市では,言語障害通級指導教室を小学校2校,情緒障害通級指導教室を小学校2校,中学校1校に設置しており,通級による受け入れを行い,一人一人の障害に即した支援に努めております。
一方,議員ご提案の学習障害に対応した通級指導教室の設置につきましては,対象となる児童生徒が一定数以上いることが前提とされ,指導を行うための教員の配置などの課題もございます。
今後につきましては,特別支援教育研修会等の充実を図り,教員一人一人の学習障害などに対する理解を深めるとともに,児童生徒の実態把握に努めながら,通級指導教室の開設について研究してまいります。

◆田中議員
(2) 不登校の児童・生徒への支援拡充について
次に不登校の児童・生徒への支援の拡充について質問します。
本市の場合、国が定義する年間30日以上欠席した不登校の児童生徒数は、6年前(2012年度)と昨年度(2018年度)を比べると、小学生は1.8倍で126名、中学生は1.3倍で316名となっており、年々増加傾向にあるとのことです。
個々の児童生徒が不登校となる要因やきっかけは様々で、年間30日以上欠席という中には、授業によって出席できたり行事や放課後なら登校可能な子もいる一方、長期間欠席が続くケースなど、不登校の状態も一律ではありません。
だからこそ一人ひとりにあった支援が求められているわけですが、多忙な先生が十分ケアしきれていないのも現実です。
文科省は今年10月25日、従来の不登校対策を見直し、学校復帰にとらわれない支援を進めるとの新通知を発表しました。今後はフリースクールやインターネットを利用した学習活動のほか学校以外の場の確保が増々重要となります。
現在の相談機関はうめの香広場1か所ですが、通級できているのはごく一部、不登校児童生徒数の3%です。市域の広さや不登校の数からみても不十分であり、複数化すべきです。
栃木県高根沢町のひよこの家は、古民家に不登校の子ども達が通っています。表面的な学校復帰を目的とせず、子どもたちが安心して心を休ませ、社会的に自立していくための居場所であり、学校給食も食べることができます。このような安心できる身近な居場所が本市にも必要ではないでしょうか。
現在、不登校対応で加配されている教員は一つの中学校に一人だけであり、訪問型支援も一人のみとのことです。あまりにも少なすぎます。どちらも全校配置を進めるべきと考えますが、計画をご答弁下さい。

◆答弁:教育部長‥不登校の児童,生徒への支援の拡充について
次に,不登校の児童,生徒への支援の拡充についてお答えいたします。文部科学省は,令和元年10月に,これまでの学校復帰のみを前提としていた不登校施策を改め,学校以外の教育の場も活用しながら,児童生徒の社会的自立を目指す「不登校児童生徒への支援の在り方について」の指針を示しました。
本市では,この指針が出される以前から,不登校児童生徒の受け入れ先となる,適応指導教室「うめの香ひろば」を設置するとともに,民間のフリースクール等へ通う児童生徒についても,出席扱いとすることで,学習意欲を高めたり,人と関わることの心地よさに気付かせたりするなど,社会的自立に向けた取り組みを行ってまいりました。
はじめに,不登校の現状についてですが,平成30年度に年間を通して出席日数が10日に満たない児童生徒数は,小学校が13名,中学校が16名となっております。
そのうち,年間を通して1日も出席しなかった児童生徒は,小学校が1名,中学校が7名おり,対象となる学校では,家庭訪問や電話連絡を定期的に行うなど,関わりを密にした支援を行っております。
次に,支援施設の増設についてですが,本市では,総合教育研究所内に「うめの香ひろば」を設置し,不安を抱える児童生徒に寄り添い,安心して通えるよう,臨床心理士等の資格をもつ相談員が丁寧に関わりながら,個別学習への支援や,少人数での集団活動を行っております。現在は,通級を希望した児童生徒全ての受け入れを行っており,13名が通級しております。
また,市内の民間フリースクールに通う児童生徒に対しては,学校や総合教育研究所が,フリースクールと定期的に情報を共有し,不登校児童生徒への支援に努めております。
次に,教員の加配についてですが,不登校解消支援教員の加配につきましては,県において配置校が決定され,本市では,中学校1校に1名の教員が配置されており,担任教諭やスクールカウンセラー等との連携を図りながら,不登校の解消に向けた支援を行っております。 この結果,不登校であった生徒が,合唱コンクールの見学や職場体験学習に参加できるようになった例もございますことから,今後とも加配教員の増員について,県に積極的に要望してまいります。
次に,訪問型支援についてですが,総合教育研究所に訪問型支援を行う,家庭訪問相談員を配置し,家に引きこもりがちな児童生徒に対する訪問支援を行っております。家庭での学習や遊び等の関わりの中で,「うめの香ひろば」への関心を示し,見学に訪れるようになった生徒もおります。
今後とも,多様な教育機会の確保に努めながら,不登校児童生徒一人一人の状況に応じた,きめ細やかな支援に取り組んでまいります。

◆田中議員
2.認可外保育施設での事故について
次に市内の認可外保育施設での事故に関する県と市の情報共有と再発防止策について質問します。昨年9月1日、市内のベビーホテルで生後二か月の赤ちゃんが死亡する痛ましい事故が起きました。
今年9月に県が公表した報告書によると、無資格者のみの保育、保育日誌がなく発育チェックや健診も実施されない、睡眠中の子どもの状況を定期的に確認していないなど問題山積で、何度も改善指導や立入調査がありながら是正されず、事故が防げませんでした。
しかも2016年にも0歳児が亡くなっていたのです。事業停止や施設閉鎖命令、基準違反の事実が公開されていれば、事故は防げたと考えます。
つくば市は、認可外保育施設の立入調査や指導内容をホームページで公表しています。保育無償化の対象でもあり、国も指導監督の徹底を求めています。
三年間で二人の乳児の死亡という重大な結果をふまえ、検証委員会による再発防止の提言を、真剣に受け止めるべきです。中核市となる本市に権限が移りますが、今後の取り組み方針をお答えください。

◆答弁:保健福祉部長‥認可外保育施設での事故について
田中議員の一般質問のうち,保育行政として,認可外保育施設での事故についてのご質問にお答えします。
平成30年9月に県内の認可外保育施設において,生後2か月の男児が死亡するという大変痛ましい事故が発生しました。認可外 保育施設の指導監査等の実施主体である茨城県は,これを受けて,事故発生の事実把握,発生原因の分析等を行い,必要な再発防止策を検討するため,有識者等で構成される「茨城県認可外保育施設等における重大事故の再発防止のための事後的検証委員会」を設置し,本年9月,「認可外保育施設等における重大事故検証報告書」としてとりまとめ,県のホームページで公表いたしました。
この検証は,国からの「教育・保育施設等における重大事故の 再発防止のための事後的な検証について」の通知を受けて,県が実施主体となって行い,重大な事故に遭った子どもや保護者の視点に立って,発生原因の分析等を行うことにより,必要な再発防止策の検討を行ったものであります。
今回の検証報告書では,子どもの健康状態及び発育等の情報把握,異常の早期発見体制と異常時の即応体制の確保,行政の指導監督の徹底,認可外保育施設を利用する保護者に対する情報提供 体制の整備など,9項目にわたる提言が行われております。
しかしながら,検証報告書の中では,施設のある市町村名は明らかにされておらず,事故発生時におきましても,県から本市に対する情報提供はございませんでした。
市町村においては,所在する認可外保育施設の情報を把握することは重要であることから,重大な事故などが発生した場合には,県と市町村間での情報共有が必要であるのではないかと考えております。
次に中核市の権限となる施設への指導等の取り組み方針についてお答えします。本市では,来年4月の中核市移行に伴い,認可外保育施設の開設や休止,廃止の届出の受理,指導監督などの権限が県から移譲されることとなりますので,今回の提言内容を踏まえ,指導監督の徹底や利用者への情報提供に努めてまいります。
また,国の通知では,ベビーホテルについては,必ず,年1回以上の立入調査を行い,その他の認可外保育施設については,年1回以上を原則とされておりますが,本市といたしましては,それぞれの施設に対して,必ず,年1回以上の立入調査を実施し,指導監督基準等による状況確認や必要に応じて,改善指導や改善勧告,公表,事業停止命令や施設閉鎖命令などの行政処分を行うなど,施設における改善が迅速かつ十分に行われるよう指導監督の徹底に努めてまいります。

◆田中議員
3. 水道料金の値上げ撤回、県中央水道の受水中止について
次に、水道行政について質問します。
来年4月からの水道料金値上げ率は平均11%とされていますが、これはあくまで平均です。月2万㎥使うような大口の場合は7%台ですが、多くの市民が該当する月8㎥の場合は、口径20ミリで16%、25ミリで17%もの値上げ率となっており、消費税の2%増税分も加えると2割増しとなる家庭もあります。
私の試算では、一般家庭で年間4500円から1万円、個人商店で3万円、中小企業や医療機関、福祉施設では年50万円から150万円程度の値上げとなる場合も考えられます。
給与は増えず年金は減っており、医療や介護の負担は増えています。水道は使わないわけにはいきません。消費税増税で家計が大変なときに約5億円もの水道料金値上げは市民にとても重い負担です。
しかも水道事業経営戦略では、今回の11%にとどまらず、5年後に15.8%、10年後に10.2%値上げし、今より4割もあげる計画です。
しかし、水道会計は毎年5億円規模の黒字です。水道は市民生活に不可欠なインフラ、ライフラインであり、起債の適切な活用と一般財源からの計画的繰り入れ、老朽管や施設更新に対する国補助実現などで賄うべきです。
なにより水道事業最大のムダは、茨城県中央広域水道からの受水です。
98年の受水開始以来、20年で県に支払った受水費は37億3000万円、消費税もあわせると39億3800万円、今年度分を足せば40億円の大台を超えます。
仮に向こう40年、今のまま県と契約を続ければ、更に50億円を払う事になります。しかも県は来年度、料金値上げを検討するとしていますが、一体いつまで全国一高い水を買うつもりか、お答えください。
水戸市自前の水道には9万人分も余裕があり、買う必要がありません。
「人口と使用水量が減る。施設は老朽化する。だから値上げする」といいながら、必要もない水の契約はやめない、これは市民に対する背信行為であり、「最少の経費で最大の効果を挙げる」と定めた地方自治法違反です。
市が県受水を続ける唯一の口実が災害時の備え、複数の水源の一つというものですが、今回の大水害で200世帯が断水した国田地域では「目と鼻の先に県中央水道事務所があるのに何の支援もなかった」と怒りの声があがっています。
ムダづかいで災害にも役立たない県受水をただちに中止し、道理のない水道料金の値上げを撤回することを強く求めるものです。
明快な答弁を求め質問を終わります。

◆答弁:水道部長‥水道料金値上げの撤回及び水道事業経営について
田中議員の一般質問のうち,水道料金値上げの撤回及び水道事業経営についてお答えいたします。
まず,老朽管更新や施設更新に対する国の補助制度の活用についての御質問でございますが,本市におきましては,厚生労働省の定めた複数の補助採択基準をもとに,財源の確保を図り事業を行ってきたところであります。
また,一般会計からの繰り入れにつきましては,水道事業は地方公営企業として,独立採算制をとることから,一般会計からの繰り入れに頼るのではなく,公平性の視点から,受益者に負担を求めることを基本としているところであり,これまでも,国からの地方公営企業操出金についての通知に基づき繰り入れを行ってきたところであります。
次に,企業債の活用につきましては,原則,平成26年度から企業債償還金の90パーセントとしており,施設整備事業費を確保したうえで,財政の硬直化の解消を図っているところでございます。
ご質問の料金改定につきましては,令和元年10月に審議会から答申をいただいた水戸市水道事業経営戦略において,企業債の借入額を償還金の120パーセントとし,令和2年度には13.7パーセントの料金改定が必要であることが明らかとなったところでございます。しかしながら,議会からいただきました御意見をもとに検討・調整を図り,平均改定率を11パーセントへと答申から引き下げを図った上で見直しを行うという結論に至ったものであります。
今後も,給水収益の伸び悩みなど,本市の厳しい経営環境を踏まえ,財源確保に向け,公益社団法人日本水道協会を通じて,補助採択基準の緩和や地方公営企業操出制度の拡充等について,関係省庁に対して,財政支援の拡充に向けた取組を引き続き実施してまいります。
次に,茨城県中央広域水道からの受水中止についてのご質問でございますが,本市におきましては,大規模災害や突発的な事故など,今後,発生が懸念される多様な危機に対して,災害に強い強靭な水道を確立することにより,市民の安心・安全を確保していくために,必要となる複数水源の一つと考えております。
また,受水料金につきましては,県が経営する用水供給事業の中でも高い水準であり,受水団体の経営を圧迫している状況にあります。
今年度が料金算定期間の最終年度となることから,11月13日に茨城県に対し,現在の料金水準や料金減免制度の継続に加え,県内広域水道用水供給事業間の料金格差緩和について検討されるよう要望を実施したところでございます。
これに対する県の見解は示されておりませんが,今後も引き続き,県の動向を注視してまいります。