田中まさき議員が「茨城の住民と自治」に寄稿した文章は以下のとおりです。

1県1水道の問題点をひた隠しにする茨城県~資料の全面公開を求める」2024年4月1日 日本共産党 水戸市議会議員 田中 真己

 

1.強引に事を進める茨城県

私達は茨城県が推進する1県1水道、経営一体化について、水道料金値上げや、7割もの浄水場の廃止で災害リスクを高めるとして反対してきた。

水道広域化や経営統合のねらいは、官民連携の名のもとに、水道事業の運営を民間に開放することを見越したものである。

さらに、これまでのムダな水源開発の反省もなく、市町村の自己水源を閉じさせて、高い県の水を買わせようというものである。

茨城県は推進姿勢をくずさず、離脱を表明した水戸市以外の自治体からなる「広域連携検討・調整会議」で、令和6年度中にも経営統合や県水道との一体化の検討・シミュレーションを進める方針である。今後、一体化を決断した自治体とは法定協議会が結成され、一気に統合に進む危険がある。

 

2.7割の浄水場廃止の水道広域化プラン~徹底した情報公開を求める

茨城県内の水道事業は、県北・県中央・鹿行・県南・県西の5つの圏域に分かれている。県は水道広域化プランで、県内105ある浄水場のうち70か所を閉鎖し、35まで削減しようとしている。しかし、どの自治体のどの浄水場を閉鎖するかは示していない。

能登半島地震でも水道の断水が深刻な問題となっているなか、身近な浄水場を閉鎖することがいかに危険なことか、住民に広く知らせる必要がある。

私は、閉鎖する浄水場の具体名やシミュレーションの根拠などの情報公開を請求したが結果はほぼ黒塗り、いわゆる「のり弁」の資料しか出されなかった。

そのため昨年10月、黒塗り資料の全面公開を求め知事に行政不服審査法に基づく「不服審査請求」を提出した。11月に県から「弁明書」が届いたが、あまりにひどい内容だったため、再度11月28日付けで「反論書」を提出した。

今後、弁護士や大学教授など10人の委員で構成された「情報公開・個人情報保護審査会」で、開示・不開示決定の当否が審査される。

しかし、今年3月末に県情報公開室に「いつ判断が出るのか」と問い合わせたところ「審査会の案件が10本程度たまっており、審査は半年くらい先の見込み」という驚くべき返事だった。一体なんのための審査会なのか、ずるずる審査を遅らせて、公開請求の意欲をなくさせる作戦か。情報公開制度が全く機能していないと言わざるをえない。

 

3.黒塗りは不当~「反論書」で主張

県は弁明書で「不開示情報を公にすると、施設の統廃合や給水原価に対する誤解や憶測に基づき、災害時の対応や水道料金の値上げに関する不安が生じるなど、不当に県民の間に混乱を生じさせるおそれがある」としている。

しかし、広域化推進プランは「経営一体化で合理化すれば、各自治体が単独経営を続けるよりも給水原価の上昇を抑制できる」と効果を強調している。

単独経営よりも広域化した方が値上げ抑制効果があるとしながら、「値上げに関する不安を生じるから開示しない」というのは自己矛盾に陥った説明がつかない態度である。

また、県は「検討中の情報は公表すべきでない」というが、シミュレーションの結果は「広域化推進プラン」として現に公表されている。

結果が公表されていない段階で、検討途中のシミュレーションの数値が公表されれば「誤解や憶測に基づき混乱を生じさせるから開示できない」と言うのならばともかく、県が自ら公表したシミュレーション結果の根拠すら公表しないのでは、説明責任を果たさない不当な態度というほかない。

さらに、県は「各水道事業体の経営戦略や個別の方針や計画を反映したものではない」というが、個別の状況を反映しないようなプランで具体的取組を進めようとしているのか。根拠も開示できないのでは「検証に耐えられないずさんプランだ」と県みずから認めたも同然である。

さらに、広域化推進プランには2つの重大問題が欠落している。一つは、全国一高い県中央広域水道の料金をどうするのか、二つはムダな水源開発である霞ケ浦導水事業についてである。導水事業完成後に発生する市町村の莫大な負担を示さないまま、なぜ「経営の一体化は単独経営より給水原価を下げられ費用抑制効果が得られる」といえるのか説明すべきである。

 

4.ライフラインの水道を守れ~住民を敵視する県に水道事業を担う資格なし

水道事業は重要なライフラインであるから県民が自分の住む自治体の水道事業がどうなるのか知りたいと考えるのは当然なのに、県民からの「苦情や干渉が増える」と言って情報開示しないのは、県民を敵視する考え方である。

物価高騰が続く中で水道料金はどうなるのか、災害時も含めて水道が今後も安定供給されるのかなど、県民の関心や不安が高まっている。

だからこそ水道事業は住民の意向を十分に反映した運営を行うべきであり、むしろ要望が多く寄せられることは民主的な手続きを踏んだ行政運営をするうえで当然のことである。

命の水を守り、持続可能な水道事業を作り上げていくためには、きちんとした現場の分析や水道事業を維持するための県民や議会の理解が必要である。

地方自治法は「住民こそが自治の担い手である」という観点から、各種権利を住民に認めている。にもかかわらず、住民や議会から出される意見を「苦情」や「干渉」と捉える県の弁明書は、もはや地方自治法に逸脱していると言わざるをえない。単独経営と広域化それぞれのメリットやデメリット、リスクも含めて県民に広く情報を開示し、説明し合意を得るべきなのに、なるべく情報を開示せず「秘密裏に方針を決定した後に知らせればよい」という県の考え方は、時代遅れで民主的とは言えない。

以上のことから、私は「開示を求めている情報は、正確な事実に基づいて判断するために最低限必要な情報であって、公表したからといって市町村等の意思決定を混乱させることにはならない。よって再度、全面開示を求める」と主張した。

引き続き徹底した情報公開と、議会や住民への説明を求めるとともに、ライフラインである水道をズタズタにし、水道料金値上げにつながる広域化に反対をつらぬいて奮闘する決意である。

①20240401_水道広域化問題を追及 「茨城住民と自治」より

②茨城県「水道広域化推進プラン 概要版」(*P.4に浄水場廃止方針)

③2023年 田中議員の水道問題レポート(共産党議員研修会にて)

④2023年11月 田中議員が知事あてに提出した反論書