私、田中まさきは、水戸市都市計画審議会の委員でもあります。
このたび水戸市が作成中の「水戸市立地適正化計画」について、本日「意見書」を提出しました。コンパクトシティの形成のため、水戸市の区域内に「中心拠点」や「生活拠点」を設定し、「都市機能誘導区域」や「居住誘導区域」を設けるというものです。医療福祉施設や商業施設など生活の利便に必要な施設配置を誘導しようとするのが『立地適正化計画』の目的とされています。私は、この計画についての意見の冒頭でも述べていますが、医療・福祉施設や商業施設にアクセスしやすいコンパクトなまちをつくることは今後のまちづくりに不可欠な視点であり、計画策定の趣旨は理解できる点もあります。しかし、住民に直接影響のある「居住誘導区域」がどうなるか全く示されておらず、新市民会館や水戸駅北口の再開発のための補助率アップを主な目的とした計画と言わざるをえないため、もっぱら反対の立場で批判的な意見を提出いたしました。その全文は以下のとおりです。

<水戸市立地適正化計画についての意見:2017.3.24: 都市計画審議委員 田中真己>

 住民が公共交通などを利用して、医療・福祉施設や商業施設にアクセスしやすいコンパクトなまちをつくることは今後のまちづくりに不可欠な視点です。
その点で、今回提案された「水戸市立地適正化計画」については、計画策定の趣旨は理解できる点もありますが、不十分な点や問題点もあると考えますので、以下いくつかの点について意見を述べさせていただきます。

1. 公共交通について 
水戸市では、バス路線の減少など公共交通の利便性が低下しています。また高齢化の進行もあり、交通弱者対策が喫緊の課題です。国田地区の1000円タクシーの実証実験がはじまりましたが、全市的に低料金で移動できるデマンド型のバスやタクシーなど、近隣自治体並みの制度を早急につくることを計画に明記すべきです。

2. 歩ける範囲で買い物ができるまちづくり
水戸市が内原のイオン誘致をはじめ、郊外型大型店の進出を促進してきた結果、中心市街地や身近な商店街の衰退を招いたわけで、そのことの分析が欠けているのではないでしょうか。商店街支援策の拡充とともに、生鮮三品をはじめ身近に買い物ができるための効果的な商業機能の配置について地区ごとのあるべき姿を具体的に提示すべきと考えます。

3. まちづくり・住宅政策について
都市計画が成功しているのかどうか、各学区の現状とその要因分析が甘いと思われます。もっと掘り下げた地区ごとの検証を行い、各地区の目標としての立地適正化計画を定める必要があると考えます。

エリア指定の区域に居住者が増えてきたことについての総括、今後の予測が必要ではないでしょうか。この10年、児童数が増えた学校は、笠原・寿・吉沢小学校であり、笠原小学校では教室不足が問題になっています。一方で市街地の新荘・城東小学校などで児童数が大幅に減っています。
今後の立地適正化計画で居住誘導をはかるとしても、人口が減少していく中、既成市街地より、安価で面積の広い宅地を取得できるエリア指定地域に新住民が住宅を求める傾向は変わらないのではないかと考えます。

赤塚小学校も児童数の減少が続き、各学年1クラスになっていますが、学区内に河和田市営住宅があり、若い世代が入居すれば児童数は維持されるはずです。
しかし、老朽化した市営住宅の更新が遅く、入居条件が厳しいことも若い世代に選ばれない一因とも考えられます。したがって、入りやすく選ばれる市営住宅に施設面・運営面の改善をすることが必要と考えます。
市営住宅の増設も必要で、その際に立地について市内のバランスを考えた配置とすることで人口定着に寄与するものと考えます。

また、住宅のリフォーム助成の大幅な普及をすることは、既成市街地に再度住む人が増え、空き家の減少にもつながると考えられるので速やかに大幅な普及をするべきです。

全体的にみると、これまでの水戸市の都市計画において、「居住誘導」が成功しているとはいえず、今回作成しようとしている立地適正化計画が、既存の都市計画区域や、各種計画の現状追認だけでは、何も変わらないのではないかと思います。

4. 都市機能誘導区域の設定、誘導施設について
都市機能誘導区域の設定については、区域外から「都市機能誘導区域」に「誘導施設」を移す場合の支援策が掲げられています。
どういう誘導施設を想定し、それが可能な土地があるのか、結局恩恵をうけるのが大手商業資本などになりかねないのではないかなどの疑問があります。地域ごとに必要とされる誘導施設をもっと具体的に示す必要があると考えます。
また、県庁舎周辺地区は子どもが増えている地区であり、子育て支援センターを誘導施設に位置付けるべきと考えます。

5. 居住誘導区域について
今回の立地適正化計画では、肝心の居住誘導区域の計画が何も定まっていません。
区域をどこで線引きするのか、住民への影響がどうなるのかが大きな課題であり、居住誘導区域の計画全体を示してはじめて、立地適正化計画として意味をなすものであるのに、肝心な部分がないままの計画では認めようがありません。

6. 施設の集約・複合化について
今後、公共施設の集約・複合化を検討するとしていますが、具体的には市民センターや幼少中などの教育施設を指しているのでしょうか。
学校や市民センターは、地域コミュニティの拠点であり、その地域に住み続けるための必須条件であり、統廃合すべきではないと考えます。
地域住民にとって重要な関心事であるが、その点が不明なままの立地適正化計画では住民の理解はえられないのではないかと考えます。

公共施設総合管理計画では将来の人口減少を見越して、基本的には公共施設を増やさず、むしろ集約・統廃合しようという計画のようです。
しかし、公共施設総合管理計画作成時点では、4大プロジェクトの市役所新庁舎、新市民会館、東町新体育館、新ごみ処理施設の施設は含まれておらず、いずれも従前より規模が相当大きくなるか、全く新設であり、完成後には水戸市の公共施設全体の延床に占める割合も大きくなります。
4大プロジェクトで施設が増えた分、市民に身近な施設の廃止などにしわよせされることがあってはならないので、4大プロジェクト完成後の考え方を示すべきと考えます。

7. 再開発事業への補助について
再開発事業への補助を主たる目的とする立地適正化計画は認められません。
本計画の策定が、国補助の補助率かさ上げの要件であるとのことです。
しかし、新市民会館を建設する、「泉町1丁目北地区市街地再開発事業」については、立地・規模・費用などについて、計画の是非を問う住民投票運動もあったとおり、どの問題でも市民の反対の声が今なお根強くあるものです。
とくに、新市民会館建設費320億円(本体建設費192億円、再開発事業103億円、駐車場25億円)のほか、周辺道路建設費なども推進されており、莫大な税金投入は反対です。
本計画に記載のとおり、今後は水戸市も人口が減少社会に入ります。したがって2000人収容の大ホールや、3000人規模のコンベンション施設は、明らかに過大な施設であり、ランニングコストも市の大きな財政負担となることは明らかであり中止見直しを求めます。

また、旧リビン跡地の水戸駅前三の丸地区市街地再開発事業については、税金で40億円以上の補助を行い、民間の不動産業者を主体とする再開発組合にマンション・ホテル・テナントビルを建設するものですが、税金補助は特定企業優遇であり、補助は必要なく中止すべきと考えます。供給過剰のマンションやホテルに投資しても、一部の利益にしかならず、居住促進策としての効果も極めて限定的です。

これら再開発に投じる莫大な税金を、多くの市民が望んでいる公共交通や住宅政策の拡充、身近な生活環境の整備、福祉・教育施設の拡充などに使う方が、人口の定着にも資するものとなると考えます。

8. 持ち回り協議ではなく都市計画審議会で審議するべき
今後のまちづくりに大きな影響をもたらす立地適正化計画について、都市計画審議会を開かず、持ち回り協議とするやり方は、市民に開かれたものとは言えません。
きちんと市民に公開した都市計画審議会で審議すべきです。

9. 今後の計画策定について
 以上のような点から、今回提案された立地適正化計画については大幅な見直しを求めるものです。特に、立地適正化計画のうち、居住誘導区域については平成30年度末までにつくるとしていますが、計画策定から全学区での住民説明会も含め2年で足りるでしょうか。住民説明会も多くの市民参加のもとで行うべきですし、今後のまちづくりにとって重要な問題ですので、十分な時間をとって疑問にこたえ、市民の意見をとりいれたものとすべきと考えます。                              以上

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なお、水戸市のホームページには「立地適正化計画」についての説明が掲載されています