2024年9月議会 代表質問と答弁 医療行政について
次に医療行政について質問します。
7月に大井川知事は、茨城県で救急車を利用した患者さんが県内の大病院に救急搬送された場合、7700円以上の費用を徴取することができる制度を突如発表しました。
これは、今年12月から県内の大病院に救急車で搬送された場合、医師の判断で「選定医療費」として病院が患者さんから7700円以上徴取することを認めるものです。 全県で導入するのは全国初ですが、県議会での議論は行ったのでしょうか?あまりに唐突な発表に、市民からは不安の声が上がっています。
「救急車を呼ぶのをためらってしまうのではないか」「街中で倒れた人を助けるために救急車を呼んだら、病院に搬送後に「軽傷」と判断される場合だってある」といった意見です。これは当然の声ではないでしょうか。
病院側の受け入れが難しく、結果として大病院に搬送せざるを得ない場合も多くあります。
市内のある、てんかん患者の家族は、「発作が5分以上続けば重責発作という危険な発作に移行する恐れがあるので、躊躇せず救急車を呼ぶよう主治医から言われています。しかし救急車が病院に到着してからてんかん発作が収まり意識が戻る場合もあります。でもその予測はできない。発作がスーパーや道端で起きて、たまたま居合わせた方が救急車を呼ぶ場合もあるのに」と切実な訴えでした。
私は8月下旬に茨城県難病団体連絡協議会が開催した懇談会に出席しましたが、そこに参加した県会議員に対し、難病の患者さんや家族の方からは、口々にこの有料化に対して強い不安と疑問を訴えていました。
有料化する問題点として、経済的に厳しい人が救急車の要請をためらうこと、有料と無料の判断が困難な事、7700円以上の支払いをめぐってトラブルがおきかねないこと。さらには救急搬送後に軽傷と判断されたが、その後に重症化した場合は訴訟問題にもなりかねません。
かつて私も助産師として病院で働いていたとき、軽傷と思われた妊婦さんの様子をみていたら、容態が悪化し重症だったことがありました。軽傷に見えても重篤な病気が隠れていることがあります。短時間で変化する患者さんの症状を誤診した場合、命を落とす危険が高まるのではないでしょうか。
また、障がい者施設や介護施設、グループホームが救急車の搬送を依頼する場合もあります。その場合、7700円以上もする救急車の搬送の費用が原因で要請に迷うようなことになれば、結果として、容体悪化につながるのではないでしょうか
やるべきは救急車の搬送の有料化ではありません。そもそも茨城県の医療体制はどうでしょうか?全国平均と比べると医師の数が少ない。人口10万人当たりの医師数が全国ワースト2位と医師少数県です。その背景として茨城県の人口が約280万人となっているにもかかわらず、現在も医師を養成する大学が筑波大学だけであることが一つの大きな要因と言われています。
医療体制の充実こそが茨城県が最優先で取り組むべき課題です。
水戸市は市民の命を守るために、救急車の有料化の導入を中止するよう県に要請すべきと考えますがいかがですか。そして、水戸市においては、救急体制の充実のために救命士を増やすなどして人員体制の強化をし、全体のレベルアップをはかるべきと考えますがいかがでしょうか。
答弁:市長
次に,医療行政として,救急搬送の自己負担導入及び救急体制の充実についての御質問についてお答えいたします。
現在,茨城県内における救急搬送件数は過去最大のペースで増加し,その6割以上が,重症・軽症に関わらず,一般病床数200床以上の大病院に集中することで負担が大きくなっている現状が課題となっており,本市においても同様の傾向にございます。
この状況を受け,茨城県は,新たに策定する統一的な基準のもと,緊急性が認められない救急搬送者から,病院が7,700円以上の選定療養費を徴収するという方針を打ち出しました。
選定療養費とは,大病院と中小病院の役割分担を図るため,医療機関が患者に特別な料金を求める制度であり,具体的には,地域医療の中核を担う大病院を紹介状を持たずに受診する患者に対し,救急患者などを除き,徴収することが義務化されております。
この度,県は,県内の救急医療の現状を鑑み,緊急性が認められない救急搬送者等からの選定療養費を徴収することとしたものであり,現在,統一的な基準や県民への周知方法等について,関係機関と協議を重ねており,12月1日からの運用開始を目途に,準備を進めているところであります。
私は,市民の皆様が安心して,救急医療を利用できることは大変重要であり,緊急性のある症状の場合には,ためらわずに救急要請していただきたいと考えております。今回の取組において,「救急車の有料化」といった誤解が生じ,本当に必要な方が救急車を呼ぶことを控えてしまうことはあってはならないことであり,市民によく理解していただくことが大変重要となります。
このため,住民に一番近い基礎自治体の立場から,また,茨城県市長会としても,分かりやすく正しい情報をきちんと発信することや,24時間365日対応の茨城県救急電話相談(大人#7119,こども#8000)の更なる充実等を図ることなどについて要望したところであります。加えて,8月に行われました県市長会の定例会等において,県から,今回の取組は県の責任において進め,県民はもとより,医療機関や消防を含めた各自治体に対して負担が生じないようしっかりと取り組んでいく旨の報告をいただいたところであり,県市長会としても,引き続き,当該取組について注視するとともに,効果や課題等の検証を求めてまいります。
本市といたしましても,市民の皆様に混乱が生じることのないよう,県と連携を図りながら,各種広報媒体を活用し,当該取組について,分かりやすい周知に努めるとともに,真に救急医療が必要な方に医療を提供できる体制を確保するため,救急医療の現状や医療機関の役割分担についても,改めて,市民にわかりやすくお伝えし,救急医療も含め,医療機関の適正な受診について御理解・御協力をお願いしてまいりたいと考えております。
超高齢社会の進展に伴い,救急搬送の出動件数は更に増大することが見込まれます。将来を見据えた救急体制のあり方について,引き続き,県や救急医療機関等と協議を重ねながら,医療機関の役割分担や相互連携の推進等,救急医療体制の維持・確保に努めてまいります。あわせて,AEDの普及啓発や応急手当のできるバイスタンダーの養成,救急車の適正利用の啓発などの環境整備を図り,増大する救急需要への対策強化に取り組んでまいります。