2011年6月定例議会での田中真己議員の一般質問と市の答弁要旨は以下のとおりです。


日本共産党水戸市議団の田中まさきです。東日本大震災で被災された皆さんに心よりお見舞い申し上げるとともに、生活再建、水戸のまちの復興に奮闘されている市民や市職員のみなさんに敬意を表します。一日も早い復興へ私も力をつくす決意を申し上げ、2011年6月定例議会にあたり、通告に従い一般質問を行います。今回は、東日本大震災後の市の対応や、今後の防災行政に生かすべき教訓について、市の見解を伺うものです。

Contents

1.東日本大震災と市の対応について

(1)情報提供について

ア.市の広報体制について
はじめに震災時の情報提供についてです。震災直後に大規模な停電となり、電話も不通となるなかで、通信手段が断たれてしまいました。どこが避難所で、食料はどうなっているのか、水はどこでもらえるのか、「情報を知らせてほしかった」というのが多くの市民の声です。
震災翌日、ある町内会長が「避難している公園に物資を届けてほしい」と災害対策本部を訪れた結果ようやく、食料や簡易トイレが届けられるといった状態で、市が避難所の実態をつかめず、どこに何がどれだけ必要か、わからないままでした。市民は自ら動いて情報を確保するしかありませんでした。そこで広報車や防災無線がどのように活用されたのか、2台のみの防災用広報車を増やし、各市民センターの公用車を災害時に利用できるよう管理することや、情報はホームページだけでなく、チラシ配布など、情報伝達の抜本的な拡充が必要と考えますが見解を伺います。

イ.防災無線の機能・役割について
停電や電話の回復は相当時間がかかり、避難所だった学校でも「情報が届かない」との声が出されるとともに、「学校や市民センターの防災無線が使われなかった」とお聞きました。確かに市の防災無線は、地域安全課をトップとする基地局16箇所、陸上移動局は小中学校や市民センターをはじめ、市の各課など合計76カ所に配備され、屋外無線を含めれば、全市をある程度網羅できたはずでした。予備電源は毎月1回以上使用し確認するとされていますが、老朽化が著しく肝心な時に機能しなかったわけです。
今回の補正予算で災害対策本部と市民センター、学校などを結ぶ新たな防災無線を整備するとしていますが、その機能と役割を伺います。

ウ.防災無線の戸別受信機の設置について
また、大洗町やひたちなか市で威力を発揮した防災無線の戸別受信機を水戸市でも各家庭に設置を進めるべきと考えますがいかがでしょうか。

<答弁者 秋葉市民環境部長>

田中議員の一般質問のうち、東日本大震災と市の対応についてお答えいたします。
まず、市の広報体制につきましては、市からの広報が不足していたとの意見が寄せられています。市民への広報は、常澄及び内原地区の防災行政無線、広報車、インターネットホームページ、テレビ・ラジオを通じて、情報をお知らせいたしました。しかしながら、市内全域が被災した中で、市民にお伝えしなければならない情報は、過去に経験しました水害と比べ、多種多様で量も多く、また、市内全域が被災しましたことから、地域ごとに必要な情報をお知らせしなければならず、今後に課題を残す対応であったと考えております。
これを教訓としまして、市民センターの公用車を含め約40台ある広報車やラジオ放送、さらには地域住民の連絡網などの情報伝達手段の有効な活用方法をはじめとして、広報全般にわたって検討してまいります。
次に、追加補正予算に計上いたしました無線機は、電話等がつながりにくい状況が発生したときの災害対策本部と市民センターや小・中学校との通信を確保するためのもので、財団法人移動無線センターが運営するデジタルMCA無線を導入する計画です。
防災行政無線の戸別受信機につきましては、市から直接市内の全世帯に情報をお知らせすることができる点で有効な広報媒体ではありますが、設置及び維持管理に多額の費用が必要となる点が指摘されております。情報伝達手段の充実を図る中で、ラジオ放送の活用など他の広報媒体と比較検討してまいります。

2.り災調査について―迅速な調査、基準緩和による再調査の徹底について

次にり災調査について、り災証明の申請と調査件数について、内容別に伺います。申請約2万件に対し、調査すみが約7千件、1日100件程度の調査では、あと5カ月近くかかることになります。迅速な調査へ体制を拡充し、すみやかにり災証明を発行するよう求めますが、いつ完了見込みかお答えください。また、国が5月に入って判定基準を緩和し、高さ1メートルに対し1センチの傾きがある場合、一部損壊から半壊に変更するとしました。半壊になると各種支援制度を受けることができることから、一度判定された家屋について再調査の徹底を求めますが市の対応を伺います。

<答弁者 秋葉財務部長>

田中議員の一般質問のうち、り災調査について、お答えいたします。
6月27日現在の、り災調査の状況を申し上げますと、申請件数は21,289件、調査済み件数は8,620件です。そのうち、全会240棟、大規模半壊198棟、半壊887棟の状況となっております。
これまでの申請に対する、調査につきましては、今夏中に調査完了できる様、全力で取組んでいるところであります。
また、被害認定基準の調査判定方法による再調査につきましては、5月2日に国から新たな方法が示されたことに伴い、再調査を進めているところであります。

3.水道行政について

(1)震災に伴う断水と給水活動について

次に水道行政について、地震に伴う断水の状況と、給水活動の課題について見解を伺います。私も相談活動で寄せられた漏水の修理依頼にガソリンがないため自転車で通いましたが、水道庁舎が使用できず、職員の皆さんは隣接する公園にテントを張って復旧作業に奮闘されておりました。
今振り返ってみますと、通水時期に大きく地域差が出たことや、給水車の不足、給水場所の選定や広報など不十分であったことなどが指摘されております。特に常澄地区は、県中央広域水道の水に依存し、県の施設が大きく破損したため復旧が遅れ、断水が長期にわたりました。この教訓をふまえ、開江浄水場から常澄地区に直接配水する配水管網の整備をすみやかに行うべきと考えますがいかがでしょうか。

(2)浄水場の非常用電源の強化について

また、楮川ダムには約20日分の貯水量があり、浄水施設に大きな破損もなく水をつくれる状態にありながら、非常用電源の容量が小さかったため通常の8分の1しか水をつくることができませんでした。開江浄水場では那珂川からくみ上げるポンプの非常用電源がなく、水をつくれませんでした。非常用電源の容量の強化と配備が必要と考えますが見解を伺います。

(3)配水管の耐震化、耐震性貯水槽の増設について

水道の配水管の耐震化率はわずか3%です。市内のあちこちで管の破損による漏水がおき、耐震化の遅れが給水回復の遅れにつながったことは明らかです。すみやかな100%達成へ期限を切った目標を定める必要があると思いますが、何年後に完了見込みかお答えください。
また、耐震性貯水槽は白梅、東台、緑町、北見町の4か所のみです。給水所となった白梅の耐震性貯水槽の行列に私も並びましたが、ピーク時には4~500名が約2時間待ちました。千波・笠原地区には耐震性貯水槽がなく、笠原水源にも行列ができました。今後は人口密集地や中学校区に1つなど増設が必要と考えますが、どのような計画か伺います。

(4)防災用井戸登録制度の実施について

次に防災用井戸登録制度について、平成21年6月議会の一般質問でも取り上げましたが、個人所有の井戸が今回活躍したことをふまえ、防災用井戸として登録し、市が水質検査を定期的に行うことを求めます。当時の戸村市民環境部長は、「防災上大変有効なため、水質検査を市が実施したい」と答弁しました。しかし市内約400本と見込まれる井戸に対し、予算は50本から80本程度で登録制はとられていません。市が井戸の位置や数をすべて把握・登録し、水質検査することです。横浜市では協力頂いた市民に「横浜市災害用井戸協力の家」というプレートを配布し、誰にもわかるように掲示しています。広域避難所となる公園等にも井戸の設置を進めるべきと考えますが見解を伺います。

<答弁者 磯崎水道部長>

田中議員の水道行政に関する一般質問のうち、はじめに、震災に伴う断水と給水活動についてお答えいたします。
水道は、市民生活や都市の諸活動に密着した基盤施設として不可欠なものとなるなか、3月11日に発生した大震災により漏水等が多発したことなどにより、市内全域が断水いたしました。
このため、災害発生直後から、災害時における相互応援について協定を締結している川口市、前橋市、高崎市による手厚い応援を頂きながら、本市消防本部職員も含め、市内各所に設けられた避難所や医療機関などの重要拠点施設に対し、給水車やポリタンク等による給水を行なうとともに、地震を感知すると自動的に貯水へと切り替わる機能を持つ、耐震型循環式飲料水貯水槽が設置されている市内4箇所の給水拠点において、応急給水活動を行ったところであります。
しかしながら、電話等の通信手段が途絶えたことにより、応急対策を実施するために必要な情報の入手が困難となったことなどから、市内の断水状況や復旧見込み等の情報提供不足や給水体制が不十分であるなど、今後の課題が明らかとなったところでございます。
このようなことから、今回の大震災を教訓に状況を十分に検証したうえで、三都市災害対策本部の水道給水対策班としての役割を十分に担うことが出来るよう、「水戸市水道震災対策マニュアル」を改定するなかで、各種広報媒体による、市民の皆様に届く分かりやすい災害情報の発信や公共施設の受水槽を活用した給水体制の拡充などについて、関係機関と協議・検討してまいります。

次に、浄水場の非常用電源の強化、配水管の耐震化、耐震性貯水槽の増設についてでございますが、今回発生した大震災に伴う停電は、本市全域に及び、その期間も長期化したことから、非常用自家発電設備設置時に想定した状況をはるかに上回る停電規模となり、市民の皆様への給水するために必要となる浄水能力に不足が生じたところであります。また、水道管の耐震化につきましては、これまで、ダクタイル鋳鉄管や耐震型継手の工事を実施しており、後継300ミリメートル以上の基幹管路の耐震化率は厚生労働省の平成21年度末現在における水道統計調査において全国の平均値30.3%に対し、36.0パーセントとなっているところでございます。大震災による被災状況については、液状化地域を中心に耐震化されていない水道管が損傷し漏水が発生したほか、常澄地区においては、茨城県企業局の浄水場や送水施設が甚大な被害を受けたことにより、県水の供給が停止したため、給水するまでに長期間を要したなど、地域により格差が生じたところであります。
このように様々な課題が明らかになっておりますが、配水管を含めた水道施設の耐震化や議員ご指摘の開江系などの非常用自家発電設備や耐震型循環式飲料水貯水槽の増設などには多額の費用と期間を要しますので、財政計画に連動したアセットマネジメント(資産管理)の手法を取り入れ、大規模災害時にも市民の皆様に常時安定的に給水することの出来る水道事業の確立に向け、今後策定予定の水運用計画の中で、これまで市民の皆様からいただいたご指摘などを十分に踏まえ、検討してまいりたいと考えております。

<答弁者 秋葉市民環境部長>

このたびの震災で飲料水あるいは生活用水として、地域において井戸が利用され、その有効性が見直されました。地域の井戸を事前に登録する防災用井戸登録制度及び広域避難場所に井戸を設置することにつきましては、今回の実態を踏まえ、今後、地域や避難場所等における用水確保対策を進める中で検討してまいります。

4.地域防災計画の見直しについて―原子力災害対策について

次に市が定める地域防災計画の見直しを求め質問します。計画は、①震災計画対策編、②風水害対策編、③原子力災害対策編の3部構成です。
震災対策は、マグニチュード7.3の茨城県南部地震が発生した想定で計画されています。東日本大震災が宮城県沖でマグニチュード9、水戸市の震度6弱という結果を踏まえ、すみやかな検証と見直しを求めます。
特に現在の原子力災害対策は、大洗の核燃料サイクル機構の実験炉「常陽」から半径8キロ圏内の範囲で計画され、避難など主に常澄地区に限った計画ですが、福島原発事故の実情を踏まえ市全域の対策へ根本的な見直しが急務です。水戸市は、東海第二原発から20キロ圏内に市役所や県庁が入り、30キロ圏内には市全域が含まれます。原子力事故が発生した場合のコンクリート屋内避難所として、常澄地区の学校、市民センターなどが設定されていますが、全市への拡大が必要ではないでしょうか。
また、ヨウ素剤の備蓄も、常陽から半径8キロ圏内の常澄地区の40歳以下の人口による1万2000人の1回分だけです。大幅に備蓄を増やし配布体制の確立が必要と考えますが見解を伺います。
水戸市が県や原子力事業所と結んでいる「原子力施設周辺の安全確保及び環境保全に関する協定書」では第10条で、安全上の措置として、東海第2原発の運転再開時の事前協議は、県と所在市町村、つまり東海村と定めています。また調査や要請ができるのは、東海村と隣接する日立市・常陸太田市・那珂市・ひたちなか市の4市に限られ水戸市は入っていません。
協定は所在市町村と隣接市町村、隣隣接市町村で権限が分かれています。しかし、ひとたび事故が起き、放射能が拡散すれば極めて広範囲に汚染が広がるわけで、隣接、隣隣接の行政の境界で区切ること自体が意味をなさず、実態にあっておりません。福島原発事故では半径20キロ圏内が立ち入り禁止、飯舘村は40キロ離れています。東海第2原発に関し、本市が運転再開や調査に意見を述べる権利が保障されていない問題をはじめ、協定見直しが急務であり、関係機関に働きかけるよう求めます。

<答弁者 秋葉市民環境部長>

次に、原子力災害対策についてですが、このたびの福島第1原子力発電所の事故により、20km圏内が警戒区域に、30km圏内が計画的避難区域に指定しされていることから、今後、国におきましても、区域の見直しが検討されることと思います。
また、茨城県においても今回の震災とそれに続く福島の原発事故のため、原子力災害対策全般にわたり見直していくことになると思いますので、安定ヨウ素材の備蓄、原子力事業所との協定を含めまして、国・県の防災計画等の見直しを踏まえ、本市の地域防災計画原子力災害対策編の修正を行ってまいります。

4.ゴミ行政

(1)災害ごみの受付延長とガレキの撤去について

次にゴミ行政について、災害ごみの受付延長とガレキの撤去について質問します。災害ごみの受付は6月30日まで、搬入期限は9月末までとされていますが、瓦や塀について、業者が多忙のため9月末までに撤去できない市民も多いのが実情であり、延長を求めるものです。
また、市が行う大谷石の塀などのガレキ撤去の回収について、再度実施し期間も延長して、市民に知らせることを求めますがいかがでしょうか。

(2)酒門コミュニティセンターの早期復旧について

酒門コミュニティセンターは、最終処分場の還元施設として9年前(平成14年5月)に建設されましたが、震災で壁の崩落や浄化槽が破損し、使用不能となっています。毎日のように市民が利用してきた施設であり、1日も早い復旧を求める声が出されています。
市の復旧方針では520万円の予算が計画されています。復旧工事の実施時期、いつから使用できる見込みかお答えください。

<答弁者 秋葉市民環境部長>

次に、ごみ行政についてお答えします。
はじめに、災害ごみの受付延長とガレキの撤去についてでございますが、災害ごみの受け入れにつきましては、震災後から5月15日まで受け入れておりましたが、申し込みを事前受付制に変更し、5月25日から再開しております。災害ごみの受け入れについては、周辺市町村の多くは5月末までに終了しておりますが、業者の手配などから撤去等が完了していない市民もおられることから、本市におきましては、9月30日まで延長しております。
この間、広報みとに「災害ごみ持込について」のお知らせを掲載し、また、水戸市ホームページにも掲載することにより、市民の皆様に周知を図ってまいりました。
従いまして、再度の受け入れ期間の延長については、他市町村の動向、国および県の指導を仰ぎながら、検討してまいります。
なお、道路上にある大谷石等については、5月31日までに要望のあったものの撤去が済んでおります。今後の要望への対応については、状況を踏まえながら関係部署と協議し、検討させていただきます。
次に、酒門コミュニティセンターの早期復旧についてお答えいたします。
3月11日に発生した地震による酒門コミュニティセンターの被害状況は、アリーナ部分の天井財の落下や外壁のひび割れ、浄化槽設置場所周辺の地盤沈下などの被害が発生したところであります。
今後の復旧計画でございますが、5月に作成した水戸市震災復旧方針において、応急処置費として520万円を計上したところでありますが、屋根鉄骨財の基礎部分など損傷被害が甚大であることから、先ず震災による損壊度調査を7月中旬から約1ヶ月かけて実施する予定としております。
その損壊度調査の診断結果に基づき、整備費を確定し、設計委託を行い改修工事の早期実施に努めてまいります。

5.教育行政―吉田小体育館、四中武道場の早期復旧について

最後に、学校施設の早期復旧を求め質問します。吉田小学校体育館は、屋根の一部が崩落し、使用不能です。卒業式・入学式も多目的室で行い、体育の授業などにも支障が出ています。もともと今年度に耐震化工事が予定されていましたが、使用再開の時期はいつなのか。また、第四中学校の武道場も天井の崩落で体育の授業や部活動で使用できません。いずれもすみやかな復旧を求める声が出されておりますが市の計画を伺います。
以上で第1回の質問を終わります。答弁により再質問いたします。

<答弁者 会沢教育次長>

田中議員の一般質問のうち、教育行政についてお答えいたします。
このたびの東日本大震災に伴い、学校施設も甚大な被害に見舞われていますが、幸いにも構造的な問題が発生した建物はほとんどなく、補修等で復旧できる状況にあります。
ご質問の吉田小学校の体育館につきましても、笠木の破損による落下等の被害が発生しており、復旧工事が必要な状況にあります。
一方、当該体育館につきましては、本年度耐震補強工事が予定され、現在、工事発注のための準備を進めているところであります。このため、補強工事完了後の安全な状態で使用したいとの学校の意向もあり、補強工事期間にあわせて、復旧工事も実施することとしたものであります。工事完了後の使用再開につきましては、来年の1月中を予定しております。
次に、第四中学校につきましては、体育館、武道場とも天井の落下などの被害が発生しておりますが、体育館は被害の程度が比較的軽く、部分補修により当初から使用しておりますが、武道場は被害の程度が大きく使用できない状況にあります。
このため、武道場につきましては、現在、復旧工事を進めているところであり、再開時期は夏休み前を予定しております。
今後とも、施設の復旧にあたりましては、学校との連絡を密にし、学校活動への影響が最低限となるよう、工事時期などを適切に捉えるとともに、安全な復旧作業に努めてまいります。