東海第二原発についての原子力規制委員会へのパブリックコメントを10項目にわたり提出しました。運転40年になる老朽化した東海第二原発は、あらゆる点から見て今すぐ廃炉にすべきです。 

2018年8月3日      

日本共産党水戸市議会議員 

田中まさき

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『日本原子力発電株式会社:東海第二発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書案』に対する意見

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1.全般的意見
福島第一原発事故は収束せず検証も終わらない中、同型で老朽化した東海第二原発は再稼働すべきでない。多くの茨城県民が反対し、県庁所在地の水戸市議会をはじめ、周辺自治体で反対決議があがっている。96万人の避難は不可能である。

2.地盤の液状化と防潮壁(審査書案 P34)について
原電は当初、原発敷地内で液状化が発生しないとして「盛土防潮堤」を採用するとしたが、最終的に液状化の可能性を認め地盤改良 を行い、支持杭形式の「鉄筋コンクリート防潮壁」を設置する方針とした。防潮壁が崩れない保証はなく液状化が懸念される地盤に立地すべきでない。防潮壁の設計変更で敷地内の地下水水位を上昇させる。原子炉建屋についても地下水位が地表近くまで上昇し、建屋内に流入するリスクが高まる。福島第一原発事故では大量の汚染水発生の原因となったが、集中豪雨により敷地内が水浸しになるおそれもある。

3.燃料の水蒸気爆発(審査書案P240~)について
東海第二原発では、炉心溶融事故が発生し、原子炉圧力容器から溶融燃料が流出した場合、あらかじめ水深1メートルで水張りしたペデスタル部に落とし、水冷することにしている。
そこで 溶融燃料と水が接触し、水蒸気爆発が生じるおそれがあると考えるがどうか。
審査書案では、「実験的研究と分析から発生確率は極めて低いと判断されている」としたうえで、「申請者が水蒸気爆発の発生可能性は極めて低いとしていることは妥当」と判断しているが、実機の条件を網羅した実験は行われておらず、妥当との判断は根拠が乏しいといわざるをえない。

4.ブローアウトパネルで放射能放出(P416 他)について
ブローアウトパネルは、原子炉建屋に設置された開閉扉で、配管破損事故時に流出する水 蒸気や炉心溶融事故で発生した水素が建屋に留まり、建物損壊や水素爆発を起こすことがないように開く設計になっている。
福島第一原発事故では、3号機が水素爆発した際に、2号機の建屋に穴が開き、そこから水素が放出され、水素爆発を逃れたが、2号機の建屋の穴からは、水素とともに大量の放射能が放出され、飯舘村などの汚染をもたらしたと言われている。
これを開放した際には、 放射能の拡散を防ぐために、 放水砲で外から水をかけて放射能の拡散を抑制することになっている。
ブローアウトパネルは、原子炉制御室の作業員を被ばくから守るために、閉止の必要があるときは容易かつ確実に閉止操作ができることが基準規則により要求されている。
原電は、地震時にも閉止操作ができることを確認するために、振動台を用いた試験を実施した。しかし、扉を閉めるためのチェーンが破損し、完全には閉止しなかった。
そもそもブローアウトパネルは、水素だけでなく大量の放射能を意図的に放出させる装置である。放水砲では放射能の拡散を止めることはできないし、操作実験は失敗した。作業員の安全も周辺住民の被ばくも避ける保証は何もない。したがって再稼働を許可すべきではない。

5.老朽化している東海第二原発について
老朽化が進んでいる東海第二原発は、2018 年 11 月 28 日に運転開始 40 年の寿命を迎える。原子炉圧力容器は中性子を浴びると脆くなる。原電は、中性子脆化の状況把握のため材料の試験片を入れ試験を行っているが、運転開始時に入れた5つの試験片はあとひとつしか残っておらず40 年で終えるつもりでいたことを表している。
炉内構造物(シュラウド)もひび割れが進んでいる。原電が炉心シュラウドのひび割れの評価を行ったところ最短で5.2 か月でひび割れが基準値を超えるとの結論であった。シュラウドの点検周期は 10 年だが、中性子照射量が多い部分は約 4.6 年間隔で目視点検を実施するから問題はないとしているが、見落とすことやカメラが入れない箇所もあり、安全性の担保にはならない。

6.非難燃ケーブル(審査書案 P99)について
古い東海第二原発は「非難燃ケーブル」が多く使われており、火災防護基準は「難燃ケーブル」に置き換えることを要求しているが、原電は、難非難燃ケーブルに「防火シート」を巻いたものを使うとしている。この対策では、防火シートを通してケーブルが加熱され、被覆材が熱分解を始め、 条件次第では、火災がケーブルに伝わって拡がり、 消火が極めて困難となる。また、防火シートによって延焼は防げたとしても、被覆がダメになり、ケーブルの機能が失われ、プラントの状態がわからなくなったり、 機器の遠隔制御が不能になったりする可能性がある。火災防護基準に厳格に従うべきではないか。

7.緊急時対策所が免震構造でないことについて(P465~)
福島第一原発事故では免震重要棟が用いられたが、原電は、東海第二原発の事故時の指揮所となる緊急時対策所を免震構造ではなく、耐震構造にする方針である。基準規則 61 条は「基準地震動に対し、免震機能等により、緊急時対策所の機能を喪失しないようにする」ことを要求している。緊急時対策所の機能は、「重大事故等に対処するために必要な指示」を行うことであり、免震機能は必須ではないのか。

8.高濃度汚染水対策がないことについて(審査書案 P413~)
福島第一原発事故における高濃度汚染水は、原子炉の冷却水が溶融燃料に触れ、格納容器下部の破損口から流出して一部が環境中に漏れ出た。建屋に入り込んだ地下水が混ざることで大量の汚染水が生じている。
基準規則 55 条は、格納容器の破損に至った場合等において「工場等外への放射性物質の拡散を抑制するために必要な設備を設けなければならない」としているが、原電の対策は、格納容器上部が破損し、気体の放射能が放出した場合、放水砲で叩き落とすというだけで、高濃度汚染水という形態での放射性物質の放出についての抑制対策はない。

9.日本原電に経理的基礎はないことについて
原子炉設置変更許可の審査には「経理的基礎」が含まれます。原電は、保有する4つの原発が動いておらず、東電、関電などからの「電気料金の基本料金(電力量ゼロの場合の料金)」でかろうじて破たんを免れている。多額の借金を負っている原電は、東海第二原発を再稼働させるための 1,740 億円の安全対策費を銀行から借りることができず、東電と東北電が経済的支援の「意向」を表明する文書を提出した。規制委は、「借入金による調達の見込みがあることを確認した」としているが、銀行が融資を断った段階で、原電に経理的基礎はないと判断すべきである。東電は、ADRの和解案を蹴ってまで、被災者への賠償を値切っており、東電が銀行に代わって資金を差し出すなど許されない。

10.原子力防災計画の欠如について
重大事故を想定した避難計画を含む原子力防災計画が実効性あるものかどうかが、審査対象となっていないのは重大な欠陥である。要援護者の避難、安定ヨウ素剤の配布、スクリーニング場所の確保、避難経路の特定など、実効性ある避難計画は立てられていない。
私の住む水戸市は約27万人の人口があり、昼間人口は30万人近い。医療機関や福祉施設、保育園や小中学校も多数あり、行政機関も数多く存在するなかで、避難先も避難手段も見通しが立たず、住民の被ばくを前提とするような避難計画は認められない。96 万人を避難させる計画などは立てようがなく、東海第二原発は再稼働させず廃炉とすべきである。

以上