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2016.7.4 水戸市都市計画審議会で田中真己議員が行った質問と主張

議題:新市民会館計画 「泉町1丁目北地区再開発事業」について

今回の議題3件はいずれも泉町1丁目北地区・第一種市街地再開発事業の都市計画決定にかかわるものであります。計画の中心は新市民会館の建設です。
私は、市が提出した都計諮問第10号、11号、12号に関する公共施設の配置や建築物の計画およびその理由書について、市民から縦覧で寄せられた意見にも触れながら、大きく5点の質問を行いたいと思いますので、順次、簡潔にお答え願いたいと思います。

1.都市計画の縦覧に寄せられた市民の声について
  どんな声がよせられたのか。それに対する市の見解について

まず、第1点目です。今回の計画に対し、水戸市で初の住民投票を求める直接請求運動が起きました。「新・市民会館計画を白紙に戻し市民の声を反映させる会」が約15000名の署名をそえて、本計画について、立地や規模、事業費などに問題があり、一から計画を見直してほしいという幅広い市民の声が広がりました。こうした市民の批判の声についてどう考えているのか、都市計画決定にあたって150名近い意見が寄せられたとのことですが、このようなことも前例のないことだと思いますがどうなのか、お答えください。

そもそも、市長が平成25年の12月議会で、新市民会館について、場所も規模も再開発という手法も一方的に表明され、第6次総合計画で68億円とした計画を変更したわけです。

事前にこれらを市民に投げかけたり議会で論議することもなかった。これが意思決定過程として大きな問題だったのではないか。丁寧な市民合意を経るべきだという民主主義の問題として住民投票の運動が起きたと私は思うのです。その内容はまったく変えないということでの広報で市民が納得するとは思えません。

2.新市民会館の立地と施設規模について

二点目の質問は、立地と施設規模についてです。
新市民会館の立地について、泉町1丁目にする理由が「理由書」にあります。
諮問にはそれぞれ第10号で「細分化された敷地の一体的かつ効果的な土地利用や、安全で快適な市街地を形成する」。第11号は「業務・医療・居住機能など多様な用途の土地が細分化され有効利用されていない。既存建築物の老朽化や密集化による防災上の問題も危惧されている。土地利用の合理化や安全で快適な市街地の形成に向け都市機能の更新をはかる」。第12号では「建物の老朽化や一部の木造密集建物による防災上の問題が顕在化している」としています。
しかし、この問題は泉町1丁目に限ったことではなく、上市地区全般に共通する課題であり、これを理由にあげるならすべて再開発しなければならなくなるのではないでしょうか。
水戸駅北口のリビン跡地や南町のダイエー跡地、ユニー跡地も候補地として検討されたと聞いていますが、いずれも、空きビルは所有者の責任で解体されました。
しかし、泉町北地区には旧京成デパートという大型の空きビルがそのままあり、それを公費で解体し、総額約60億円の補償費のうちから、多額の補償が行われるのではないか、特定企業優遇と批判されるゆえんはここにあると思うのです。
用地選定の経過を示してほしいと要望書も市に提出されていますが、その点どのようにお考えかお答えいただきたい。
芸術館との一体性という問題も、結局後付けの理由ではないか、という疑問がありますし、実際に市民の方からもそういう意見が寄せられています。
事業採算性が取れないから長年再開発の話がありながら進まなかったところに、市民会館計画をあてはめたものだと思います。

3.新市民会館の規模、駐車場の問題について
●2000名大ホール、全体3700人収容の市民会館の利用見込みと需要予測は?
●特に3000人規模のコンベンションの需要はあるのか。
●年間60万人の来客の根拠は?
●駐車場不足の問題…専用300台のみで十分と考えているのか。

三点目に施設規模と駐車場についてです。
諮問書には、容積率最高限度600%(10分の60)建ぺい率最高限度80%(10分の8)、新市民会館は延べ面積が約2万1800平米としています。敷地に目いっぱいの建物をたてる計画です。これがまちづくりとして妥当なのかという問題です。

これは、2000名の大ホールをそなえ、全体収容3700人、3000人規模のコンベンションに対応する施設にするためです。このことについて、従前の1000人規模のホールこそ使いやすいし費用も安く済む、需要を見極めていない過大な施設計画だ、年間60万人の来客の根拠も不明だという批判が寄せられていますが、どうお考えなのか。60万人というと平均で2000人が300日間利用しないと達成できません。
11号の理由書では「空地を確保し都市機能の更新をはかる」とあることとも矛盾するのではないか。あわせて見解をお聞きしたいと思います。

規模にかかわって、駐車場の問題もお聞きしたい。
市がかかわった再開発の例をあげれば、赤塚駅、大工町、泉町南地区など、いずれも再開発区域内に駐車場があり、そこで発生する車両はその駐車場で責任をとるという形をとってきました。今回の北地区では、過去のどの再開発と比べても大型のイベント、コンベンションで多数の人を呼び込もうという施設にも関わらず、敷地内に駐車場がない。芸術館東側に作るという専用駐車場も300台のみと聞いておりますが、詳細は示されていませんし、その計画に排気ガスや日照権の問題で反対の声が上がっていることも見過ごせません。
来館者の利便性や安全性が確保されるのか、渋滞をまねき周辺住民への迷惑となるのではないか、などの問題がクリアされるかどうかもわからぬまま都市計画決定していいのか。
多くの市民の疑問だと思いますので、お答えいただきたいと思います。

施設を作れば客が来るという時代ではありません。2000名規模のホールが苦戦している状況もよく見る必要があると思います。詳細な需要調査を行って、市民が求めるコンパクトで費用もかからない施設にすべきだと思います。
3000人規模のコンベンションともなれば大型バスを含む1000台内外の車両の駐車が必要です。市は必要台数を700台とし、約400台は近隣駐車場の空車分を見込み、自前の駐車場は300台と計画していますが民間駐車場に依存しすぎではないでしょうか。

4.事業費と公費負担について
●市民会館192億円、再開発103億円、合計295億円+駐車場建設 約320億円となる。
●市の実質的負担について、代替地の取得にかかる費用も含めどれくらいになるのか。
●開館後の約3億円の運営費・ランニングコストを示すべき
●将来の改修費 ライフサイクルコストも具体的に説明を求める。

四点目に事業費と公費負担についてです。
再開発に関する事業費総額は263億円。収入は補助金など103億円、床を買う、完成後に市が市民会館の保留床を買い取るのが160億円。支出は工事費が173億円、補償費が60億円などです。総額263億円に市民会館建設に必要な舞台装置など30億円や駐車場などをあわせると約300億円の見込みです。市の年間予算の3分の1、当初計画の4倍以上です。

これは後々の市の財政にとって大きな負担であり、完成後の年間約3億円規模の維持費や多額の改修費も必要となってきます。密集地域ではなく、別の場所を選びなおし、公費負担を抑えることは十分可能なのではないか、という疑問にどうお答えになりますか。
完成後の維持費用や、改修費用を示す考えはないのかお答えください。

また、263億円という再開発事業費が、工事費や補償費が増加し、それに伴い補助金も増えるのではないかという疑問がありますが、どうなのか。工事における単価や物価の変動、補償における1割の権利変換の想定も変わればそれぞれ増える可能性が高いと思います。
補償にかかわって、代替地の取得の費用は再開発事業費とは別だと聞いているのですが、どういう関係なのかお示し下さい。
さらに、最近市長が表明された、新市民会館と南地区の京成デパートを結ぶ、デッキ通路の建設については、今回の縦覧の「建築物イメージパース」にも再開発の建築物の計画にもまったくないのですが、これはどのようになるのか、費用もふくめて説明してください。
諮問11号には、壁面の位置の制限に「歩行者デッキ」とある。検討ではなく計画にすでに組み入れられているとすれば議会での説明とも異なるのではないかお答えください。

結局、事業費増加の可能性は否定できません。建設費192億に対し合併特例債をあて、あとで交付税措置63億円があるというのも、市の最大の期待値であって、そのとおり来ることはまずないのであって、市の財政に大きな負担となることはまちがいないと思います。

5.再開発事業という手法の問題点と地権者の意向について
●これまでの再開発事業についてどう評価しているのか。住民や小規模商店を追い出し、できたテナントビルが埋まらない状況であり、活性化したとは言えない。
●計画地内の地権者数と反対地権者の存在についての見解は?。反対している地権者には土地収用を適用するのか。

五点目です。再開発と都市計画道路建設、地権者の意向についてです。
再開発という手法でこれまでの例をみると、赤塚駅北口ミオスは当初あった店舗が撤退し、公共の団体が利用、大工町ではテナントビルが埋まらないなど、成功し活性化したとは言えないのではないかと思います。
今回の泉町北地区でも長年その場所で住み、商売を営んできた方がたがいます。
計画にきっぱり反対だとおっしゃる方もいます。それをどうお考えなのか。

そういう状況で、都市計画決定をするということはどういう意味をもつか、ということです。都市再開発法には、「土地の明け渡し」について第98条で「明け渡し期限までに土地や物件を明け渡さぬ場合、知事等は(市長は)、行政代執行法に従い、自ら義務者のなすべき行為をす」ることができると規定しています。その費用に補償金を使えるとあります。強制的に土地や建物をとってしまうことができる、そういう権限を行政に与えることになります。

これは諮問第12号の延長200メートルの都市計画道路「7・6・12号 市民会館通り線」についてもいえることです。すでに上市192号線、幹線市道4号線と名前がついている道路ですから、拡幅整備したいならすればよいところに、わざわざ都市計画路の名前をつけて決定するのは、将来的な行政代執行を含めた強制力を持たせる意味があると思うのですが見解はどうか伺いたいと思います。

最後に、住民合意で計画の根本的見直しをすべきではないか。
前回の都市計画審議会では平成12年(16年前)に一度都市計画決定した根本第一土地区画整理事業を中止するという諮問が出ました。「権利者から事業計画及び換地計画に対する合意が得られなかった」つまり 住民合意がとれないから中止するというものでした。
これまで、16年の歳月を要してしまった。生活環境は置き去りとなってしまった。
十分な市民的な議論と検討がなされて、住民合意ができなければ、事業として成功しないと思います。それが根本地区の教訓だと思います。
今回の泉町北地区の再開発については、主要施設となる新市民会館についても、再開発という手法についても、多くの批判が寄せられ、問題点が指摘されたままであり、都市計画決定はすべきではないと私は考えます。以上です。