受給者の娘宅を職員が突然訪問、親への援助迫られたが…

政府は生活保護受給者の親族にたいし扶養義務を強化しようとしています。茨城県水戸市で、その〝先取り〟ともいえるようことがおこなわれ、問題になっています。
「1階の店にいた義母に突然呼ばれ、降りて行ったら水戸市役所から来たという男の人が2人いて…」。同市内の店舗兼自宅に夫の両親と同居するA子さん(34)は、4月中旬の出来事が忘れられません。

生活苦しいとこたえると…

突然訪ねてきた職員に、実家が生活保護を受給しているのを知っているか尋ねられました。知っていると答えると「いくらかでも支援できますか」と援助を求められました。
「『自分も生活が苦しくできません』と答えました。すると1人の職員が『ハハッ』と笑って。馬鹿にされたような気がしました。私が働いているか聞かれ、パートに出ていると答えると『そういう風に申請しておくね』といって帰りました」とA子さん。
実家の父親(68)は十数年働いた会社を定年退職しましたが、年金がありませんでした。再就職できず生活保護を受給しました。がんで手術を繰り返し療養しています。母親も持病があり通院しています。

家族の関係がどうなるかと

A子さんはこれまで、実家が生保を受給していることを夫や義父母に伝えていませんでした。「夫は理解してくれたけど、義父母がどう思うか分からない。親同士の付き合いが上手くいかなくなるかもしれないし、そうなったら夫婦の間だって…」と語ります。
水戸市の生保世帯は約3900世帯。2008年のリーマンショック以降、急増しました。同市は「少しでも(保護費の)支出を減らしたい」(生活福祉課)と、昨年度から警察官OBを含む嘱託職員2人を雇い、市内に居住する扶養義務者の台帳をつくって実地調査(訪問)し、仕送りができないか、ただしています。同課によると4月下旬までに159世帯を訪問したと言います。
A子さんの実家に担当ケースワーカーと職員2人が訪ねてきたのは昨年末。親族の連絡先を教えるよう求めました。父親は二男と兄の連絡先を教えましたが、A子さんのことは「言わなかったし、聞かれもしなかった」と言います。「話にも出ていない娘の嫁ぎ先にまでなぜ市は訪ねて行ったのか」。怒りを隠しません。

共産党指摘で市側から謝罪

生活福祉課は「(扶養義務者を)訪問していいか、必ず被保護世帯の了解をとるようにしている」としています。しかし実際には了解なしの訪問でした。父親の訴えを聞いた日本共産党の中庭次男水戸市議の指摘を受け、同課は4月下旬、A子さんの父親に謝罪しました。中庭市議は議会で「扶養の強要は親族関係を悪化させ、共倒れで貧困を拡大する場合もある」と、実地調査の中止を求めてきました。
政府は、福祉事務所の判断で扶養義務者にたいし扶養が困難な理由を説明する責務を課す生活保護法改悪を準備しています。中庭議員は言います。「いまでも水戸市は生活保護申請の相談者の半数しか申請を受理していません。親族に扶養調査がされることを知り辞退する人もいます。法改悪で扶養義務が強化されれば、必要な人が保護を受給できず、餓死や孤独死がいっそう多発する可能性がある。法改悪はやめるべきです」
▼生活保護と扶養義務▼
扶養義務者による扶養は生活保護受給の前提条件ではありません。親族が扶養義務を果たさなくても受給できます。ただし扶養義務者から送金があれば保護費は減額されます。

~以上、赤旗日刊紙2013年5月15日より抜粋~
▼赤旗の記事へのリンク▼
|http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-16/2013051610_01_1.html|20130523171622_0